「このままではだめだ!」
「おや、うさぎ君。どうしたんだい」
「やあ、キリギリス君。こないだの競走の件さ」
「ぼくも見たよ、惜しかったね」
「...惜しくはなかったよね。がっかりだろ?あれ以来ボクはダメ人間のお手本さ。こんど童話になるんだと」
「ダメ人間なものか、君には才能があるし」
「そんなもの、努力の前には無意味さ。ボクがそのいい見本だ」
「油断しただけじゃないか。ボクなんか怠け者代表として、とっくに童話になってるよ」
「相手はアリ君たちだね。彼らの生き方って、地に足がついてるよね」
「カメ君もね」
「だから思ったんだ、生まれ変わろうって」
「実はボクもそうなんだ。地に足の付いた生き方を始めようと」
「そうだ、何も特別なことじゃなくていい。毎日飽きずに最後まで頑張ることが大事なんだ!」
「普通が一番だね、なんだかボクも元気が出てきた。歌ができそうだよ。タイトルは『明日からがんばろう!』」
「おっ、いいね!なんだか踊りたくなってきた。そうだ、今晩は踊り明かそう!そうと決まれば、ひとっ走り行って酒を買ってこなくちゃ!」
「お金は?」
「まかせといて!ツケがきく店があるんだ」
——————————————————————————————————————————————————–
アリとカメ
「….ねえ、カメ君」
「なんだい、アリ君」
「ボクたちの人生って、なんだったんだろうね…」