1961年公開の「ウエストサイド物語」のリメイク。またリメイクかと放置していたが、こちらはスピルバーグ作品と知って視聴した。スピルバーグといえばリメイクされる側で、今さら超名作のリメイクなど晩節を汚すリスクしかない。それを敢えて挑戦したところに、興味がわいたのである。
オープニングは古いビルの解体工事現場のドローン撮影なのだが、どう見ても「トゥナイト」の名シーンの舞台になった古い非常階段の鉄組みが、瓦礫と一緒に押し潰されて散らばっている。ちょっと驚いたが、これは一筋縄でいかない作品かも知れないと期待が高まる。
「物語」の名曲やダンスシーンはどうなるのか心配になったが、こちらは「物語」に忠実だった。ただし画面はドローンを駆使したダイナミックな演出が組み込まれているようだ。また、ミュージカル映画のダンスシーンといえば、ワンカットの長回しが見せ場だが、こちらもたっぷり見せてくれる。ただし現代の映画なので、テクノロジーを駆使した合成やつなぎ合わせが施されているのかもしれない。例えば書類の散らばる警察署の一室や、波止場の穴だらけの桟橋で激しく踊るシーンは、見ていてちょっと怖かったがCG合成だったのだろう。
主人公のトニーを見守る雑貨店主の老婦人が、非常に存在感があったのでチェックしたら、「物語」でアニタを演じてアカデミー助演女優賞に輝いたリタ・モレノだった。この人はその後トニー賞(ミュージカル)、グラミー賞(レコード)、エミー賞(テレビ)の、アメリカのエンターテインメント4大タイトルを獲得した「グランドスラム」である(※)。本作の撮影時は90歳近いはずだが、演技だけでなく製作総指揮も勤めている。
リメイク映画には安直なものも多いが、本作は原作の良さを次の時代に引き渡すための、いわば美術品修復のような仕事だと感じた。上映時間はどちらもぴったり同じ、2時間 36分である。歌のほか多くのシーンで「物語」が踏襲されているが、それだけにスピルバーグがどういう変更が必要だと考えたのか興味深い。時間があれば、「物語」とシーンごとの比較をしてみたいものだ。
※アメリカ・エンターテインメント4大タイトル(EGOT)獲得者は、リチャード・ロジャース、オードリー・ヘプバーン、メル・ブルックス、ウーピー・ゴールドバーグなど、16人のみ。

文楽(人形浄瑠璃)を大阪に住んでいた若い頃に、何故か劇場に観に行きました。凄かったです。何がと言えば、人形を支える黒子が段々見えなくなって来て、如何にも人形だけが演技しているかのように思えたのです。太棹の根も鼓も腹に響くほどの迫力でした。あれはタダの人形劇では無いですね。いいものを見せてもらいました。
あれは良いものだろうなと前から思ってるのですが、観る機会がなかったです。背景が黒というわけでもないのに、黒子が見えなくなるというのがすごいですね。私が観たのはせいぜいテレビですから、ときどきカメラが切り変わりました。もしかしたら、昔の芝居小屋のように劇場で同じ視点からじっと見続けるほうが、人形に集中できるのかもしれませんね。
ウエストサイド・ストーリーの原作もしっかり見てはいなくて、或る場面のカットのみしか知りませんが、リ・メイク版、それもスピルバーグ監督作品ですか。想像もつきませんが、彼のウエストサイドは、現代にも通用するような近代版になっているのでしょうね。近代技術のCGなどを多く駆使した彼らしい構成の作品なのでしょうね。
最近の映画ですから、CGを駆使すればするほど、当時の風景や調度品が蘇ります。ミュージカルは唐突に踊ったり歌ったりするのがなじまない人も多いですが、セリフ、音楽、演技、舞台装置など、すべてのクリエイティブな仕事を盛り込んであるので、創造性が高いと思います。歌舞伎や文楽と同じですね。