何年か前から、久しぶりにSFらしいSF映画が立て続けに封切られているなと思っていたが、なんとなく見逃していた。これはそんな作品のひとつ。
洋画の邦題のつけかたがおかしいのは有名だが、これもまた、どこにも”オデッセイ”な冒険や活劇はない。原題の「the martian(火星の人)」が示すとおりに、事故で火星に一人で取り残された宇宙飛行士と、生還のために奔走するNASAなど、地球側の話だ。ロビンソン・クルーソーと、名作映画「アポロ13」をミックスして、徹底的な科学考証を施したような映画である。美しい映像と、火星で生き抜くためのアイデアを、主人公の身になって味わう。そんな地味な映画でもある。
この作品に悪意を持った人物は出てこないし、人間関係の軋轢も描かれない。とりわけ主人公は絶望的な状況でも常にポジティブで、悲嘆にくれたり癇癪を起こすこともない。テーマから予想される重苦しさは全くないのが映画としては少々異色だが、宇宙飛行士は世界中で最もポジティブな思考の者から選ばれ、そのチームは個性や相性が徹底的に調査され、テストされて編成されるのだから、実は非常にリアリティがある。
エンドクレジットにNASA関係者が何名も名を連ねていただけあって、科学的考証が徹底している。寒さをしのぐため、使用済み核廃棄物のケースを取り出してその熱を利用したり、活動停止した火星探査車を掘り出して修理し、限定された能力の範囲内で地球との通信を回復したりと、まるでNASAで実際に行われる遭難を想定した議論を、そのまま映像化したようだ。
他の惑星に取り残されるなど,無人島に漂流より厳しいですね。あの宇宙服を着たままで過ごすためには人間の食や排泄など一体どうするのでしょうか?それとも宇宙服を一時脱いでも大丈夫なのでしょうか?酸素はボンベが無くなったら死んでしまうでしょうね。映画ですから何とかなるのでしょうが?実際なら怖い話ですね。他の生命体が居たとしてもまたそれもコミュニケーションが取れれば良いですが,攻撃されるかもしれませんからね。