黒くてひょうたん型のバイオリンケース.ネットを探すと,私の考えるようなケースを探してる人は他にもいたが、面白いことに,そのほとんどはモデルガンを入れるか,人形を入れる(?)ためだった.みんな,現代的なケースにはイマジネーションをかきたてられないらしい.
国内のオークションを探すと、ケースは案外簡単に手に入った.昔ながらのバイオリンケースは,現在のものと比べると随分小さく,楽譜まで入れる余裕はない.多分衝撃には弱いだろうし,雨の日は中まで濡れてしまうかもしれない。だがこれでようやくバイオリンを手に入ったという実感と愛着が湧いてきた.本体が届いた時は,いろいろおっかなびっくりだったのだ.
ケースに収めたバイオリンのそれらしい雰囲気に有頂天になり,つい調子に乗って,”ジョージ・ワシントン“を貼ってしまった.「スーパースターになっても,セントラルパークでストリート・ミュージシャンをしていた時に,最初にもらった1枚のことを忘れない」という思い入れである.
そんなことを考えながら,最初は悦に入っていたが,まじめにクラシックをやってる人が見たら不愉快だろうなと,だんだん後悔しはじめる.が,ボンドで貼ったので,はがせない.まあ,とりかえしがつかないのが人生というものだ.歳をとってよかったことは,なんでもすぐ人生を引き合いに出せること.ついでながら,
「俺の音楽がブルースかどうかなんて知らないね.知ってるのは,これが人生だってことだけさ」
というセリフも考えてある.あとは,どこかで使う機会を狙うだけだ.
ちなみに,マシンガンを入れるのは,どうもバイオリンではなく,ギターケースだと思う.バイオリンのケースは小さすぎるし,重さで取っ手がとれてしまう.酒のボトルを入れるのは実在した.禁酒法時代をテーマにした,アメリカのテレビドラマの記念品として作られたもので,本物のケースよりだいぶ小さく,なかにボトルとグラスが入ってる.プレミアがついて取引されているようで,ちょっと欲しくなってしまった.なお,ジョージが本物かどうかというような野暮は言わないで欲しい.そのへんは,「スタッフがおいしくいただきました」ということで.