CGを作っていると、錆や汚れ、コンクリートのざらついた表面などが好きになる。本当に表面が荒れているのではなく、単純なツルツルの平面なのに、錆の画像などを貼り付けただけでそれらしく見えてしまうからだ。
また、こういう素材の表面は光が反射することがないので、光線の当たり具合で色合いが変わったり周囲の不要な物まで写し込んでしまうこともない。錆の表面はざらついているという、見る側の思い込みに乗っかって楽をしているのだ。
だが、そういう錯覚が仇になることもある。今回も油差しと汚れた布を作ったのだが、茶色のはずの油汚れ部分がどうしても血に見えてしまうのだ。人間の視覚が、血の色に過敏にできているのだと思う。
錆びと言っても赤錆も有れば青錆も有りますからね。見た目には気にならないですよ。それも本体の錆でイメージづけられていますから、勝手に頭の中で関連付けられてしまいます。車や人力車や自転車など骨董的な物には錆が付き物ですね。錆もまた趣を醸し出しますね。
CGの本体は昔の石膏の建築模型のように真っ白ですが、コンクリートやレンガ壁の写真を貼り付けてそれらしく見せています。現物の写真を使うとリアルですが、広い面積に敷き詰めると境目が不連続になり、遠目でもタイルを貼ったようになってしまいます。そこで現物の写真素材の、隣り合う部分を細かく修正し、自然に連続して見えるようにしたものをつかいます。この作業は、テキスタイル・デザインで模様の連続を考えるのと同じです。ただ、遠距離から見るのと同じなので、例えばツタの生い茂った壁の、葉っぱ1枚まで矛盾なく隣とつなげるというわけではなく、一部半透明にして重ねただけで、人間の目が錯視をおこしてそれらしく見てくれます。そのへんが妙味ですね。