2021年公開、ギレルモ・デルトロ監督によるサイコ・スリラー映画である。パンデミックによって多くの映画が、映画館での公開が見送られたり、先送りになったりしたが、この作品も撮影期間が大幅に伸びたらしい。
ギレルモ・デル・トロ監督は、ダーク・ファンタジーの傑作「パンズ・ラビリンス」から、「パシフィック・リム」のような巨大ロボット格闘ものまで、幅広いエンターテインメント作品を発表してきた。本作は、1930年代アメリカの巡回サーカス、見世物小屋、千里眼マジック、霊媒師など、少々ダークな世界を舞台にした、精妙な心理サスペンスである。
とりわけ、主人公が駆使する読心術トリックが見どころ。対話相手を観察して性格や職業、家族構成などを当てて見せるコールド・リーディングや、事前に個人情報を調査しておくホット・リーディング、「あなたは慎重な性格だが、時に衝動的な行動に出ることもある」というような、どちらともとれる言い方で錯覚させるショットガンニングなどの騙しのテクニックとその種明かしが面白い。
危ない橋をわたり損ない、追い詰められていく主人公の心情は息苦しく、エンディングも救われないが、一方で社会のダークゾーンを行き来しながら生きる人々への、不思議な暖かさも感じさせる。これは監督の人柄からくるものなような気がする。
少し高度なスリラーものの様ですね。霊媒師も占い師も、詐欺師さえも、今ではネットを駆使してあたかも自らの超能力やテクニックで成し得るように見せかけますが、ネットの無い時代には彼ら彼女らはどうやって言い当てたり、騙したりできたのでしょうね。そんなテクニックを種明かしするとなれば、余程の推理作家か、それとも実践者からの情報収集か?監督独自の構想なのか。まさに心理サスペンスの様ですね。
巨大ロボット格闘映画を作るような監督なので、ややこしいトリックもわかりやすいのがよかったです。狙うカモや観衆の眼の前で、頭をフル回転させながらピンチをやりすごし、騙しにかかる主人公は、ある種の魅力も感じますね。