食品スーパーで,ハラール食品のマークを発見した.ハラールは,イスラムの戒律に則って処理された食品という意味で,イスラム教徒はこれ以外の食品を口にしてはいけないという.まだそれらしい人を見かけたわけではないが,東南アジアなどから相当数の観光客が来ているそうだから,このスーパーでもこれからイスラムの客が増えるのだろう.
また,空港やホテルでも,イスラム教徒のために礼拝所が用意されているという.礼拝所と言っても,仏教やキリスト教のように”御神体”があるわけではなく,床に絨毯が敷いてあり,メッカの方角を示す標識とコーランがおいてある小さな部屋らしい.
日本とイスラム圏とは,はるか昔からシルクロードで結ばれていたらしいが,一般人が交流するようになったのはごく最近だ.本格的な交流が始まったばかりの時期に,そういう配慮がなされ始めたというのは,非常に重要なことだと思う.イスラム圏の,今後何百年にも渡る日本への印象が,今決まるからだ.
イスラムの厳しい戒律は,他宗教の人間に強制するものではない.逆にほんのちょっと,そのへんを配慮してくれれば仲良くしますという,イスラム教徒からの申し出のようなもの.ある意味とてもわかりやすい人々なのである.それを思えば,施設内に小部屋を用意したり,たとえは悪いが,トイレやタバコ程度の時間を礼拝のために席をはずすくらい,日本人からすればどうということもないはずだ.
仮にテロリストが日本を狙ったとして,空港やホテルに礼拝所があり,スーパーにハラールが売られていることを知ったらどう思うだろう.そして万一事件を起こした場所に礼拝所があったら,他ならぬイスラム圏の人々はどうするだろうか.中東には,ナントカ国を憎む善良なイスラム教徒が何億人もいて,連中など足元にも及ばないほど強力に武装され,士気の高い軍隊もあるのだ.
そう考えると,日本はごくごく小さなコストで,実にうまくイスラムに対応しているといえる.これから日本が独自の移民政策をとり,あるいは国際社会と協調して中東問題に関わる場合にも,日本の立場が理解されやすくなるだろう.日本は今,偉いさんの活躍ではなく,民間のほんのちょっとした配慮で,国際政治や安全保障,経済にかかわる大きなテーマを解決しようとしている.
ちなみに,戒律に則った処置を施した食品と言うと,鮮度を重んじる日本人は目黒のサンマのような,味の抜けたようなものを想像してしまう.が実際のハラールは,使って良い食材や器具が昔のまま厳密に決められているので,余計なものが入らない自然食品のようなもので,安全で味も良い.
次回「ハロウィン」(10/31公開予定)
乞うご期待!