バイオリンは本来庶民派の楽器かもしれない.最近そんな風に思う.例えば,バイオリンとサックス、ピアノを比べると,バイオリンの素材はほぼ木だけ.それを切ったり削ったり,貼りあわせたり.家具職人の持ってるような工具だけで出来そうだが,サックスはいかにも特別な工具が必要そうだ。ピアノは素材も多く,一人の職人で作っているとは到底思えない.特別なものを除けば,値段も本来この順番で高くなっていくのが普通だろう.世界的に見れば,バイオリンはそれほど高くない楽器なのかもしれない.もしかしたら,ギターよりも手に入れやすかったのではないかとさえ思える.
激安バイオリンは極端かもしれないが,世界では日本人が考えるよりずっと安いバイオリンで音楽を楽しんでいる人がいるような気がする.特にジプシーやカントリー&ウェスタンのように,民族音楽で使われているのは,どう考えても家が買えるような高級品とは思えない.
私の激安バイオリンも,今後相当上達しても、音は決して良くならないだろう.プロ奏者の演奏のように澄んでピュアな音ではなく,平坦でもっさりしている.が,歌で言えばオペラの歌姫やウィーン少年合唱団だけが歌じゃない.サッチモや高倉健の歌は,決して美声ではないがソウルフルだ.そんなふうに身の丈にあった値段や音色のバイオリンで,自分に合った演奏ができてもいいように思う.
とはいえ,激安8千円のバイオリンでは,ある日突然どこかが壊れてしまうのではないかという疑念は消えないが.