人間は中年ころから新しい音楽に興味を持てなくなる。さらに高齢になると、音楽を楽しんでいる人でも、聞くのは若い頃に知った曲だけで、新しい曲は覚えられない。という学者の研究があるそうだ。
いや、それはないだろう。少なくとも自分なら、初めて聞く曲でもものの2、3回聞けば、鼻歌で歌えるようになるはずだ。なんなら試してみようじゃないか、ということで、今まで聞いたことがなかったが、良い曲だと思ったものを覚えることにした。
選んだのはリベルタンゴで知られるアストル・ピアソラの「oblivion」。もちろん非常に有名な曲なのだが、タンゴはあまり詳しくなかったので、私は知らなかった。でも、ゆったりとしたきれいな曲だな、これなら…と思って、2.3回聞いた後で脳内で再生しようとすると...あれれ?
楽器の音色や雰囲気は思い出すのだが、メロディが出てこない。これはまずいぞということで、時間の許す限り、作業中でもBGMとして聞いて耳タコ状態にし、何十回か聞いた頃には脳内再生もバッチリになった。と思って、今度は外出中に鼻歌で歌ってみると、出だしはスムーズだったが、途中から違う曲のフレーズが混じってきた。やはり寄る年波には勝てない部分があるようだ。
※動画は、イタリアのマリオ・ステファノ・ピエトロダルキというアーチスト。まだ30代で、数々の賞を獲得したと言うから、これから有名になっていくかもしれない。それにしても、演奏中の陶酔っぷりは大したものだ。これに比べればロックなどの激しいステージ・パフォーマンスも、まだまだショーっぽい感じがする。
アルゼンチンタンゴのステージはみました。スターカットの効いた奏法ですが、このようなバンドネオンの演奏方法を聞いたのはは初めてです。まるで別の木管楽器みたいですね。
タンゴは大人の音楽ですね。一度くらい生を聴いておけばよかったと思います。昔は感傷的すぎる気がして、クールなモダンジャズのほうが好きでしたが、最近は、年取って涙もろくなった心に、感傷的なタンゴが染みます。リズムだけ聞けば威勢がいいくらいだという、不思議な音楽ですね。
音楽とは正に音を楽しむものなのでしょうね。自分が演奏したり、歌ったりも相当慣れ親しまなければ音に酔いしれるほど楽しめませんね。今日も人気の少ない堤防にクルマを停めてトランペットの練習をしましたが、思った音が出ずガッカリしたところです。昔はもっと自分の音に酔って演奏していたと思うのですが、40年余の時間はなかなか取り戻せません。
ギャングの用心棒の頭の悪い方、みたいな風貌でこの演奏っぷりですから、滑稽と感動の際どい勝負な感じですね。昔より自分の演奏が気に入らないのは、それだけ耳が肥えたからだと思います。サンバ、ボサノバ、タンゴの違いが、説明できなくても聞けば感覚的に分かる。長年どこかしらで聞いてきたからでしょう。若い頃にそういう引き出しがたくさんあれば、ミュージシャンの道行けましたね。