李子柒 / 塩

今回の李子柒は塩。

政治的な発言をしたり、誰かの入れ知恵なのか、急に総花的な内容に変わってきたりと、少々興ざめして最近あまり紹介しなかった本シリーズだが、今回は内陸部での塩製造が紹介されていて面白かった。原始的かつ大掛かりな井戸から塩水を組み上げ、煮詰めて塩を作っていた。内陸部の塩といえば岩塩だが、これは岩塩層を通ってきた地下水なのだろう。この場所は夙沙という地域らしいが、「夙(しゅく)」と言えば漫画カムイ伝に出てくる非人集落。中国語的には差別的要素がないのかもしれないが。

料理は、テーマが塩だけにピータンから炒めものまでいろいろ。まだちょっと手を広げすぎて以前の素朴さがない感じもするが、珍しい調理法も出てくる。最後に登場する”自動流しそうめん機”のようなものは、卓上の「曲水の宴」装置だそうだ。曲水の宴とは、昔の中国の貴族の間で流行った遊びで、流れる水の上に浮かべた盃が通り過ぎるまでに詩を詠み、盃に乗せて流すというもの。
古来中国では、書道が最高芸術であり、中でも最高峰と呼ばれる王羲之の蘭亭序は、その後の楷書や草書などの書体の発展のもととなった作品。その蘭亭序は、曲水の宴のために書かれたということだから、流しそうめんどころか、中国4千年の文化のエッセンスなのだが。確かに中国文化はすごいが、そういう大げさなものになぞらえるようなシリーズではなかったような気がする。しかもちょっと不便そうだ。

本シリーズの後追いで、ネット上には伝統工芸や料理文化をきれいな画面で紹介する動画が溢れていて、正直言うとそっちのほうが面白かったりする。だが、ここまで絶大な人気となったものが、今後どんなふうに衰退していくか、ちょっと意地の悪い楽しみはある。

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