アメリカの映画芸術科学アカデミーは、2025年以降の選考基準として、主演か助演の俳優のうち、少なくとも1人はアジア系、ヒスパニック系、黒人などであること、それ以外の出演者のうち少なくとも30%は、女性や性的マイノリティー、障害者などで構成されること、映画のテーマが、こうした人たちに焦点を当てていることなどの条件を発表した。
本ブログでも以前、最近のハリウッド映画は主要な配役の中に黒人や女性を、ことさらに知的で善良、かつ社会的ステータスの高い役としてキャストしているようだという記事を書いたことがある。(ハリウッドの黒人枠)この記事は本ブログでも隠れた人気があり、やはり同じように感じる人がいるのだなと思っていたのだが、なんとこのたび、前述のような基準が制定されたという。あきれるやら、なさけないやらである。
ハリウッドはこれまで、作品を通じて差別など社会の暗部を描き出し、アカデミーはそれを賞することで社会にアピールしてきた。今回の発表は、これまでのハリウッド映画界のヒューマンなとりくみを、ただのお役所仕事にしてしまう愚行である。キング牧師やマルコムXも「そういうことじゃないんだよ」と言うに違いない。
それでも私は、子供の頃から親しんできたハリウッド映画界を信じている。新基準を一切満たさない傑作や、行き過ぎたマイノリティ擁護活動の闇を描くような勇気ある作品が、アカデミー作品賞をもぎ獲ってくれるだろうと。