どんな曲を練習すればいいのか.これについて私は最初からよく知ってる曲をやろうと決めていた.周囲に二胡を習ってる人間がいるが,見ていると自分の知らない中国の曲を,楽譜を見ながら練習している.先生の模範演奏は聞いてるのだろうが,完全に頭に入ってない曲を,楽譜を見ながら弾くのは無理がありすぎるように思える.
楽譜というのは音楽を伝える方法としては,全く不十分だと思う.知ってる曲,というとき,我々は歌手や演奏家の演奏として覚えている.クセや演出や編曲もそのままだ.ところが楽譜にはそういう装飾音などが書かれていない.だから楽譜通りに演奏すると,自分がどう演奏したかったのかもわからなくなってしまう.
大体楽譜通りの演奏はつまらないものだが,プロはそれに個性を付け加えて魅力を増す.いったん楽譜通りのそっけない演奏を覚えてしまうと,そこから本当にやりたかった演奏に近づけるには,プロなみの演出能力が必要だ.
そこで、徹底的に動画を見ることにした.現代人なら楽譜より動画だ.多分モーツァルトも,動画サイトがあったら楽譜なんて書かずに,アップしまくっていただろう.
バイオリンの動画だけではなく,ボーカルでも,ビッグバンドでもなんでも見て,楽譜はせいぜいキーを調べる時だけ見ることにした.そうして見つけたのがこの動画.こんな風に気楽に演奏してみたい.
アメリカ・ジョージア州のスー・タムリンさんの「”What a Friend We Have in Jesus」.日本語では「いつくしみ深き」という賛美歌だそうだが,あれ,そんなタイトルだったかな.違う曲名で知られていたような...それはともかく,サイトを見ると音楽の指導やオーケストラの団員,お葬式の伴奏などをしてる演奏家とのこと.ネットの面白いのは,こういうところだ.私も生まれて初めて,ジョージア州に思いを馳せることになった.何も思い浮かばなかったが.
アレンジ楽譜集を販売していたので注文すると,数日してから返事が.演奏旅行に行ってたとかで大層恐縮していた.いえいえいいんですよ,メールは見た時に返信すればいいんです.即返信しないと失礼とか言うのは日本だけですから.
さて,しばらくして楽譜が届いた.曲自体は賛美歌が中心らしく知らない曲が多かったが,ご本人のアレンジが書き加えられているのがありがたい.ネット上にも楽譜は無数にあるが,実際の演奏時のアレンジまで書いてあるものは少ない.