一風変わったグルメ&旅行マンガである。SNSで話題になっていたので読んでみた。
「危険な場所にほど美味いものがある」と言う作者が、日本人は決して行かない海外の治安の悪い地域で体験した、とびきりの美味いものを紹介する。こう聞くと開高健あたりの男臭いエッセイのようだが、紙面には美少女キャラクターしかでてこない。マンガ原作者である作者(男)は、長年美少女マンガの読み過ぎのせいで、現実世界の人々もすべて美少女にみえてしまう、という想定だ。
これはなかなか巧みな趣向で、実際には相当人相が悪く常に銃を手放さないような連中と会ったのだろうが、そのまま描けば硬派なドキュメンタリーになってしまう。そこを美少女だけにしたことで、グルメという軟派な話題に焦点が合わせやすくしている。
日本はどこでも70点から90点のものが食べられるが、危険な場所には20点か5万点しかないのだそうだ。これは産地だから鮮度が高いというだけではない。ごく普通の食材で日本にもあるメニューが、日本人には受け入れられない作り方や食べ方のせいで、決定的な味の差になるらしい。またアマゾンでは、青くて固く、酸っぱくて水気のないオレンジが、ジュースになったとたんに生涯最高のジュースになるという体験をする。フルーツに詳しいブラジル人は、「そのまま食べてもおいしいフルーツのジュースより、ジュースにしないと美味しくないもののほうが美味いジュースになる」と言う。
そう聞くと、以前このブログにも書いた、リンゴの旭で作ったジュースを思い出す。旭は昔からある品種だが、歯が溶けるかと思うほど酸っぱい上、鮮度が良くてもどこか歯ごたえがシャッキリしておらず、瑞々しさがない。それが沢山手に入ってしまったので、試しにジュースにしたら、まさに5万点の味だった。
ちなみに紹介されているメニューには、レシピもある。が、危険な場所でなくても、メニュー自体が危険というものもあり、ちょっと試す気にはならない。