外見上の問題はなさそうなので,届いたバイオリンを早速弾いてみた.正確ではないが大体チューニングして,弓を張って松脂を塗る.弦に乗せただけでもギシギシというような雑音がしたが,弓をすっと横に引くとすると,なんとそれらしい音が出た!
もちろんクラシックの名演奏を聞くような,透明感のある美しい音ではなく,どこかもっさりしているが,オーディオを通してしまうと消えてしまういろいろな音を含んだ,それなりの楽器の生の音である.例えて言えば,オペラの歌姫ではなく,サッチモが歌っているような.ジャンルによっては,綺麗すぎる音よりもふさわしいのではないかと思えるような音だ.
さて,本格的に練習するためには,まず調律が必要.セットに調子笛がついてきたが,別にデジタル式のチューナーを買った.ギターをいじってみた人ならわかると思うが,笛の音と弦の音が同じかどうか判別するのは非常に難しい.それがデジタル式なら音程が合った瞬間,色が変わって知らせてくれる.バイオリンだけでなく,さまざまな楽器用のデジタルチューナーがあるようだ.こういうものは昔はなかった.初心者には必需品だと思う.幸い値段も千円程度だ.
もうひとつセット以外で買ったのが肩当てだ.バイオリンにとりつけて,肩に乗せて弾きやすい位置に安定させる道具だが,正直今回バイオリンのことを調べるまで,そういうものがあるのを知らなかった.肩当ては比較的新しい道具らしく,子供時代にはなかったはずだ.これは練習用というわけではなく,今ではプロも半数以上の人がこれをつけて演奏するらしい.これも手に入れておいた.
見かけないものといえば,4本の弦すべてにチューニングの微調整のための,アジャスターがついていた.もともとバイオリンは頭の部分の穴に木製の杭(ペグ)を差し込み,これを回してチューニングする.木と木の摩擦だけで止まっているので,ゆるく差し込むと弦の張力に負けて巻き戻されてしまい,きつく押し込むと微妙な調整がしにくい.アジャスターは,ペグで大雑把なチューニングをしたあとで,小さなネジを軽く回すことで微妙な調整ができる.デジタルチューナーとアジャスターのおかげで,チューニングはかなり楽にできるようになった.