サンドウィッチ

昔からサンドウィッチが好きだ。その昔ニューヨークのデリカテッセンを紹介した本で、ごく薄い食パンに、やはりごく薄くスライスした膨大な枚数のコーンドビーフを挟んだのを見てから、それが自分のめざすサンドウィッチ像になった。当時はそこまでのサンドを出す店がなかったが、今ならどこかのカフェにありそうだ。
ともあれ自分で作るしかなかったが、日本のハム類は1枚ずつ食べるためのものなので、厚く重ねると塩味が濃すぎる。そこでブロック肉を塩漬けして茹でてスライスした。これで、1枚だけなら屁の河童だが、枚数を重ねてサンドにして初めて旨さがわかるサンド用のハムができた。また、トマトやレタス、マヨネーズなど水っぽいものをたっぷりのせたものも好きなので、業務用の梱包資材店で、ハンバーガー用の紙袋も用意した。

食パンも薄いものはなかなか売っておらず、あっても一袋で値段が倍。一番の問題は角型食パンはどれも上が凹んで、断面がM型になってることだ。ふわふわした食感のものが好まれており、主にトースト用だからかもしれないが、これはほぼどの食パンも同じ。他の家庭ではあの状態からどうやってサンドイッチにするのか、非常に不思議だ。風味もちょっと難ありで、甘ったるい人工的な香りがして、ハム類、レタス、トマトなどと合わない。つまり全滅である。
唯一の救いは、業務スーパーの1本ものだ。表面がバリッと硬めに焼き上げてあって型崩れがしにくく、中身も変な香りや甘みががない。これを買うようになってから、1cmの角材で専用ガイドを作り、研ぎ上げた菜切り包丁でパンくずひとつ落とさず鏡面スライスにしている。残った分はそのまま冷凍し、さらにミキサーでパン粉にすると、少人数家庭でも多すぎることはない。
同じ悩みを持つ人は多いらしく、最近はこだわりの食パン専門店が増えてきた。中にはおかしな店名をつけて、お菓子さながらに甘ったるいのを売る店もあるが、先日知人から頂戴した銀座の銘店のものは、粉の品質と焼き加減の良さだけで勝負した、至極まっとうなものだった。それからはもっぱら銀座からお取り寄せ、というわけにはいかないものの、ささいなわがままを気に留めてくれたというのはなんともうれしいものだ。

ちなみに、アメリカンな具だくさんサンドとは逆に、キュウリをはさんだ薄いサンドウィッチがあるが、あれはイギリス式で、1851年に始まった。この年のロンドン万博に総ガラス貼りのクリスタルパレスが出展され、貴族の間でも自宅に温室を作るのが流行った。そして冬にキュウリのサンドウィッチを出して、来客に温室を所有してることをアピールしたのである。格式高くも鼻持ちならない一品であって、もちろんキュウリとパンの相性は最悪だと思う。

2 thoughts on “サンドウィッチ

  • 5月 16, 2022 at 17:28
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    サンドウィッチは余り食べませんが、時々コンビニで型崩れしないパッケージのものは買う事があります。何故ならレジ袋などのなかで 潰れないようにするためですが、今流行りのSDGSの点から見ればビニールゴミになりますからいけないのでしょうね。ソフトクリームやアイス最中のようにパッケージも食べれるようなサンドウィッチならどうでしょうね。それにしてもコダワリのサンドウィッチですね。感心します。

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    • 5月 16, 2022 at 19:32
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      コンビニのでも十分おいしいですから、わざわざ作る以上は肉料理、野菜料理と言えるようなのにしています。ホットドッグはスーパーでドッグ用のパンとソーセージを買うだけで、特に工夫をしなくても十分美味しいです。ハンバーガーは、自作するとなんか違和感のあるものになってしまいます。初めてドネルケバブサンドを知った時は、地元に店がなく、マネできるようなしろものではないのが残念でしたが、今はあちこちにありますね。

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