命がけの芸

今から何年前のことだったか,札幌の小ホールで古今亭志ん朝師匠の公演があった.前座が圓菊師匠という豪華な顔ぶれだったが,二人の噺が終わってから,「住吉踊り」が始まった.これは古くからある高座芸の一種で,まさに伝承が絶えようとしていたのを志ん朝師匠が復興させたものだ.そういえば子供時代のラジオの寄席では「奴さん」などをよく聞いたが,そのうちさっぱり聞かなくなった.

動画は笑点で演じたものだが,顔ぶれといい,時間制限のあるテレビの枠の中でたっぷり20分ほどかけていることといい,住吉踊り復興への,落語界の力の入れようが伝わってくる.「住みよい」というくらいで,正月にふさわしく縁起の良い踊りなので,しばらくご覧いただきたい.

さて,見れば分かる通り,陽気でコミカルな踊りだが,ずっと片足立ちでいたり,刀を持って殺陣まがいのことをやったりと,これだけでもなかなか辛い踊りである.だが当日は,踊りの終盤で志ん朝師匠自らとんぼを切ったのである.つまり宙返りをやったのだ.当時はもう50歳を超えていただろう.いくら貴重な踊りの伝承のためとは言え,落語会の大看板がとんぼ返りの練習をし,さらにこの地方の小ホールでそれを演じて見せたのである.それは「あっ」という間のことで,度肝をぬかれてしまって,当日の演題も忘れてしまったほどだ.万一失敗すれば,命にも関わるだけに,本当に大変なものを見せていただいたと思うし,芸のため命をかけるというのはどういうことか,教えてもらった.

次回「七草粥の作り方2017」(1/6公開予定)
乞うご期待!

3 thoughts on “命がけの芸

  • 1月 4, 2017 at 09:52
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    長唄なんかを両親が好きでラジオで聴かされていましたが,当時は勉強の傍らにウルサいとしか感じなかったのですが,大阪で人形浄瑠璃を一人で観に行った事がありましたが感動しました。黒子が見えなくなって人形が自ら動いている錯覚に陥りました。義太夫の太棹の音も心に響きましたね。

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  • 1月 4, 2017 at 09:07
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    一時期演じ手がいなかったそうですから、なんとなく聞いたことがあるというのも、我々以上の世代なんでしょうね。昔のお年寄りはこういうことをよく知ってましたが、粋人が多かったんでしょうね。

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  • 1月 4, 2017 at 08:06
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    動画見せていただきました。母が幼少の頃に東京で習い事として,「奴さん」や「藤娘」を舞う写真は見ていましたが,疎開先の田舎育ちの僕は,実際に日本舞踊は観る機会が無かったのですが,でも歌だけは聞かされて居たので覚えていますね。兄の影響で芝居やクラシックバレーは嫌々ながら観ていた記憶はあります。伝統芸能は継ぐ人が居なければ絶えてしまいますから若い人たちに継いで欲しいのでしょうが,最近では外国人のほうが日本文化に興味を持つ人が多いですね。

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