「結果が求められるときに、その想像力のなさが問題なのだ」

スターウォーズの外伝「スターウォーズ7クローン・ウォーズ」の中の、ダース・ベイダーのセリフ。
帝国に支配されたとある惑星で、帝国軍の将校が逮捕直前まで追い詰めた手配中の反対勢力のメンバーに逃げられてしまう。ベイダーにその報告をした際に、自分は定められた手順に従っていたと弁解するのだが、ベイダーは「結果が求められるときに、その想像力のなさが問題なのだ」と言って処分してしまう。でれっと眺めていた番組で、突然含蓄の深いセリフが出てきて居住まいを正した覚えがある。

何しろ帝国なのでパワハラの極みではあるが、一般社会でも、政治以外の場面は、民主的でなければならないわけではない。企業だけではなく今では役所も結果が全てだ。想定していない出来事が常に起こり、良好な結果のために、現場ではルールや指示内容を逸脱しなければならないことも起こる。むしろそういう場合、ときにはルールを逸脱する判断をしてもらうために人間を雇っているのだとも言える。

私の世代は、度胸と根性と誠意さえがあればどんどん業績が上がった時代を知っているが、今となっては夢物語である。労力であれ資金であれ、技術力であれ、資源を最大の効率で生かさなければ組織は生き残っては行けず、そのためにはきめ細かいルールが欠かせない。とはいえ、保身のためにマニュアルを求めるのは少々疑問だったのだが、さすがはベイダー卿、一刀両断である。

歯が悪くなってきた。

歯の弱い家系なので覚悟はしてきたが、近年とみに歯が弱くなってきた。そのくせバリバリザクザクした食べ物が好きなので、寂しい思いをしている。特に中華料理の、強い火力を使った青菜の炒めものは、もう二度と食べられないだろう。堅焼きの醤油せんべいも好きだ。しかもなるべく硬いのが好きだが、かじりついて歯で割るなんていうのは過去の夢で、手で割って食べなければならなくなった。その際ゲンコツなどで割ると、小さな破片が飛び散ってしまうが、指一本で「秘孔」を突いてやれば、揃った大きさの破片になって粉が飛び散らないことに気づいた。私はこれを「破煎拳」と名付け、長く世に伝えていきたいと思う。

破煎拳要諦第一
・其れ煎餅には虚実の違いあり。実は薄く均一にして固く、虚は膨らみて中空なり。
・破煎にあたってはよく実を見極め、これを打つべし。虚を打つべからず。
・中央に有りて、実にして平らかなるは第一の秘孔にして、北冥と称す。
・実にして中央に近く、窪みたるを南冥と称し、第二の秘孔なり。
・中央に在りと言えども膨らみたるは、虚孔と称しその中虚し。これを打つべからず。
・破煎の道は遠しといえど、朝夕に各千打を行えば、必ずや道は開けん。

(日本語訳)
煎餅には固くて薄く、中身の詰まった「実」と呼ばれる部分と、膨らんで中が中空の「虚」と呼ばれる部分があるので、よく見極めた上で、「実」の部分を指先で打つのである。「実」のうち、中央にあるものは特に「北冥」と呼ばれ最も割りやすく、中央から離れていても「実」の部分は「南冥」と呼ばれ、二番目に割りやすい。中央にあっても「虚」である部分は、(片面だけ割れて、全体が割れないことがあるので)これを打つべきではない。煎餅をきれいに食べやすく割るのはなかなか困難なものだが、日々の修練を重ねれば、必ず熟練できるだろう。

黒船

我々の世代は、子供時代から学生時代の、最も知識が身につく時期にインターネットがないという、大きなハンデを負っている。身近な図書館では蔵書が限られていて、どんな本があるのかの検索も、子供にはできない。何かの知識を得ても、専門分野以外はさらに正確な情報があるかどうかさえもわからず、せいぜいテレビで特集されたものについて、多少突っ込んだ知識があるという程度なことが多い。

1953年のペリー来航も、アメリカが突然軍艦を押し立てて訪れ、開国を迫ったと思っていた。今でも外国資本による大型店の開店が「黒船」に例えられたりするが、実際は「突然」ではなく、ちゃんと事前に入港を知らせる書状が送られている。それどころか、アメリカからはペリーの9年前に通商条約の締結を求めて使節団が送られていて、幕府に断られている。

また、ペリー艦隊の航路もアメリカから太平洋を渡ったのではなく、イタリア、アフリカ南端、インド、シンガポール、マカオ、香港、上海などを経て、沖縄から浦賀に入港している。幕府への書状もマカオから送っている。庶民は驚いたかもしれないが、幕府にとっては予定通りの行事だった。黒船が軍事的な脅威だったかといえば、4隻程度では全く問題にならない。国内には無数の大砲や鉄砲、軍船があったし、黒船軍が本気で暴れても、数日程度しかもたなかっただろう。
では何の意味もなかったのかといえば、公式訪問であることを示すという重要な意味があった。例えば江戸時代でも、清国、オランダ、ポルトガル、イギリスなどとはそれなりの交流があった。だが、それらの国王の親書が来たからと言って、日本では何の権威もないしそもそも本物かどうか確認する方法もないので、それによって外交方針を変えていては、為政者とは言えない。対して黒船は、個人では所有できない軍艦である。いわばアメリカの大統領専用機、エアフォース・ワン(空軍所属)が来たようなものだ。国を挙げての本気の申し出であることを示すには、最適な方法だったといえる。

当時の国際情勢も、ちょっと検索すると意外な事実が見えてくる。ペリー来航時のアメリカの人口は2300万人だが、日本人は3000万人以上いた。アメリカは技術先進国ではあったが、日本のほうが大国だった。その後はいざしらず、ペリー来航は「大国アメリカのゴリ押し」と言うより、順当な訪問だった。
ちなみにペリー来航の目的は、アメリカの捕鯨船への補給基地の開港である。当時のアメリカでは、産業革命が起こって長時間労働が増え、照明用の鯨油の増産が必要となったのだが、これは不思議なことだ。効率的で生産性の高いはずの蒸気機関で生産するようになって、労働時間が増えたのである。
考えてみれば、大規模な設備投資をすれば、機械をフルに稼働させて回収しなければならなくなるのは当然のことだ。だから「IT化を進めれば、作業が効率化し労働にも生活にも余裕ができる。人間の仕事が機械に奪われるかもしれない」などというのも、たわごとだろう。

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