天然鯛焼き

鯛焼きには天然ものと養殖物があり、天然は一匹ずつの焼き型、養殖は数匹分を一度に焼ける型を使うと言われているが、違いはそれだけではない。その昔、鯛焼き屋を開店するには、最初に木型屋で鯛焼きと全く同じ形の木彫りの元型を一つだけ彫った。これを鋳物工場に持ち込んで焼き型を作るのだが、元型が一個なので一個ずつの焼き型しか作れない。その代わり、木型を彫る段階で、店主は使う材料の原価や姿形の好みを職人と相談して作るので、焼き上がった鯛焼きも、そのお店だけの形になった。
天然物の焼き型は、木彫りの微妙な彫り跡がそのまま再現され、仕上がった鯛焼きも、鱗の一枚までキリッとした、粋な姿になる。そして、焼き型が壊れたり、商売繁盛で規模拡大する場合には、この木型からまた焼き型を造る。なので元の木型は非常に重要で、お店では丁寧に包んで神棚に置いておいた。

これに対して養殖物の焼き型は、数個いっぺんに焼くために形が崩れやすいので、最初からそれを見越した単純な造形になる。天然はお寺や和室の欄間彫刻のようだが、養殖はマンガっぽい姿になってしまう。さらに焼き型自体も大量生産で、合羽橋などで養殖用の型を買ってくれば商売が始められるので、全国の鯛焼き屋が全く同じ形の鯛焼きを売っていたとしても不思議はない。

また、材料や味もちょっと違ったようだ。天然物は焼き上がりの姿を大切にするので、皮はほぼ小麦粉と水で、あまり膨らまない。そのタネを焼き型のすみずみまで薄く行き渡らせ、鱗の先端までシャキっとメリハリをつける。固く、パリパリになりがちな皮を、できるだけ薄くし、アンコの湿気を吸わせて柔らかく焼くので、姿が良く、尻尾までアンコのつまった鯛焼きが出来上がる。
養殖物の場合は型が単純で失敗が少ないので、皮に卵やベーキングパウダーを入れ、カステラ状の生地を作って、ふくらむ力で尻尾まで形を造る。また、こういう生地なら、コストのかかるアンコを少なくできるというメリットもある。

何人もの職人の技があって初めてできる天然物だが、残念ながら、北海道では札幌市東区の柳屋以外は絶滅したと言われている。

李子柒/豚肉の燻製

今回の李子柒は、豚の半身から作る燻製類。いわゆるソーセージとベーコンだ。使う調味料は違うものの、塩蔵、乾燥、燻煙のプロセスは同じ。レバーの中に塩漬け卵の黄身を詰め込んだものは西洋の燻製では見かけないが、濃厚な味の好きな人にはたまらないだろうと思う。出来上がった腸詰めはサラミのように乾燥していて、炊き込みご飯の具になった。滲み出た汁を吸ったおこげは、いかにもうまそうだ。

同じ腸詰めでも、焙煎するのが西洋式でしないのが中国式という説もある。また、アメリカ人はBBQのコンロに、くん煙剤のチップを放り込みながら焼くことが多いが、燻煙で区別するのは、炭やガス、電熱などの無煙の熱源が普及してからのことだろう。大昔は、狩りの獲物を焚き火で焼くにせよ、乾燥させるにせよ、煙がかかってしまったに違いない。そして多少なりとも煙のかかった肉の味こそ、近代に至るまでの長い年月、人間にとっての肉の味だったのだろうと思う。

李子柒 / 自家製醤油

今回の李子柒は自家製醤油である。

脱穀に使っていた連結式の棒は唐棹(からざお/フレイル)。世界各地で古くから使われていたものらしく、武器としても、敵の盾越しに頭を殴るのに使われた。さらに棒が短くなったものがヌンチャクになり、西欧でも先端がスパイク付きの鉄球になって、名前もそのままフレイルという武器になった。このへんは映画やマンガでおなじみかもしれない。

醤油づくりに戻ると、収穫した大豆は水でふやかしてから蒸し、麹をかけて発酵を待つ。麹菌が回ったら塩水を入れて寝かせる。数ヶ月寝かせたモロミを布で濾せば自家製醤油の出来上がりだ。
この醤油で作るメニューは、きゅうりの醤油漬け、魯肉飯と煮玉子。メインの丸鶏の蒸し焼きは卵の餅(ピン/クレープ)に包んで食べる。塩分過剰なようでも、糖分と違って塩分は体内に過剰分を排出する仕組みがあるから、豊富な素材を使った食事をしていれば、体の調節機能もしっかり働いてくれる。しかもかわいい孫のオール手作り。おばあちゃんもまだまだ長生きできそうだ。