米は太る

米の価格が一向に下がらない。調査によれば70~80%の値上げだが、体感では100%の値上げだ。ランク下の銘柄に切り替えた人もいるだろうが、一方、米だけは良いものを食べると宣言する人は多い。こういう人は価格が上昇してもいつもの銘柄を食べ続けている。これは日本人ならではの食文化であって、必ずしも裕福だからグルメだからというわけではない。なので、米業界関係者に、「悲願の米価上昇を消費者が受け入れてくれている」などと考えさせてはいけない。

たぶん、関係者に価格の高さを訴えてもムダだろう。相手はそのへんは織り込み済みで、どんな強烈な言葉で訴えても、集計の1データにされておしまいになる。彼らにとって最も気になる数字は販売量である。これが減ってしまうとすべての米政策は意味がなくなる。不買運動という手もあるが、食文化を捨ててまでやることではない。そこで意識改革で乗り切るのはどうだろう。

まずは「米は太る」という認識を持つ。これは事実である。米中心の伝統的な食生活は太らなくて健康的という説は、誰かさんの流布したミスリードだ。毎日ご飯、わかめと豆腐の味噌汁、めざし、漬物という食事をしているなら確かに太らない。が、米とトンカツ、ハンバーグ、唐揚げ、餃子、ポテトサラダ等々のメニューでも米も食べているから太らないというのは、常識的に考えられない。

節約したいから大量購入するというのも、筋が通っているようで通ってない。逆に10キロ袋で買っていたものを5キロずつにした場合、倍の頻度で「米が少なくなってきた」状況が起こる。そんな時米以外のメニューにすることもあると思うが、その頻度が倍になる。重要なのは米は生鮮食品だということ。玄米での保管ならともかく、精米したものは家庭で消費するペースでも急速に風味が落ちている。また、昔の米びつは木でできていたので通気性があったが、プラスチックの米びつは密閉されているのでいろいろなガスが抜けていかない。小袋にすれば精米したてのおいしい米を食べる機会が増える。

さらに言えば、銘柄を下げて節約するのも良い手ではない。うまい米はそれだけで満足感があるが、味が落ちると下がった満足度を量で満たそうとしてしまう。いつもの通り美味しい米を食べて心を満たしつつ、メタボが気になってた人がこの機会にお代わりを控える、あるいはゆっくりよく噛んで食べるようにする。テレビやスマホを横目にかっこむのではなく、姿勢を正してまず米の輝きや香りを味わい、一口ずつ噛みしめれば、今まで知らなかった米の本当のうまさに開眼するだろう。そうやって自然にセーブした分だけで家計にも健康にも好影響となり、全国的な消費量も違ってくるはずだ。

人間の行動は、数ヶ月間かけないと習慣化しないそうだ。逆に言うと、数ヶ月あれば体に負担をかけていた余分な消費量は削減される。なのでその間「米は太る」と書いた紙を家中に貼ったり、PCやスマホの壁紙にするくらいのことをしてもいいかもしれない。

ということで、スマホ壁紙を作ってみた。ダウンロード大歓迎です。

モッツアレラ・チーズの考察と自作

昔から高齢者の食事にモッツアレラ・チーズがいいのではないかと思っていた。シュレッドやブロックではなく、水に入ったもののことだ。塩分、カロリーは低めで高タンパク、低脂肪、クセがない。ピザやラザニアに使うのが一般的だが、刻んでサラダに混ぜたり、塩コショウや簡単なソースでそのまま切って食べることも多い。豆腐みたいなものだから、わさび醤油にも合う。

以前はスーパーではなかなか見つからず、あっても高かった。100g300円を切ったら、頑張ってるなあという感じで買うことにしていた。乳製品は消費者のニーズが反映されにくいが、それでも酪農王国北海道なら、もう一押しがんばって日本の食に新しい潮流を作ってもいいんじゃないかとも思っていた。

ところが最近、モッツアレラ・チーズを作るメーカーが増えてきた。軒並み価格があがった乳製品の中で、しかも頑張って価格を維持している。乳製品は酪農家と農協、メーカーの関係が密接で生産が北海道に偏っている。しかも基本的な食品過ぎてブームになることもない割に品不足や値上げだけが責め立てられる難しい分野だ。大胆な動きがしにくい中で、久しぶりに目立つ新ジャンルが登場した感がある。

酪農業界の努力に期待しつつも、簡単に自作できそうな気もして製法を調べていた。正式にはクエン酸やレンネットが必要だが、酢だけでもいけるというので試してみた。結果、うまくいったと思う。ポイントは低温殺菌牛乳を使うことで、普通の牛乳ではモロモロとしたカッテージチーズしかできない。凝固剤の種類にかかわらず、高温で殺菌された一般の牛乳は、成分が変質しているようだ。

手順は、低温殺菌牛乳を64度(※1)に温めて酢(※2)を加えてまぜてゆくと、ゆるい搗きたて餅のような状態になるので、ザルなどにすくいとって90度のお湯の中で揉みながら滑らかな球状にまとめる(※3)。自分の場合は少しきつく絞りすぎたようで、ハードタイプのナチュラルチーズのできたてみたいになったが、中は十分なめらかで熱したらちゃんと溶けて糸を引いた。原料の牛乳の費用と市販品を比べたコスパでは、自作が若干優位。絞りすぎなければ倍くらいのコスパになったかもしれない。残った大量のホエーは、ナンの生地に使ったので十分お得感があった。また、良質な低温殺菌牛乳を使うので、味は合格だった。

今後の課題は手際の良さ(※4)。今回はもたついて若干量の無駄が出たようなので、スムーズにやればもう少し歩留まりがよくなりそうだ。また、全脂粉乳はフリーズドライなので成分が熱で変質していないそうだから、これで乳固形分を足してドーピングできないか考えている。

※1 温度は50度に達したところで火を止めて酢を入れれば良いとわかった。
※2 酢の量は30ccだが、ホエーが白いようなら酢を足すか、温度を上げる。仕上がりの滑らかさでは温度はそのままで酢を足すほうが良いように思う。また、酢を入れてからはあわてず時間をかけてかき混ぜてやると、ホエーがかなりはっきり透明になる。
※3 仕上がりがつるんと丸いのは格好いいが、多少ボソボソして見えても表面だけで中はなめらかだ。ちなみにこのやり方では、1Lの牛乳が仕上がりが200gになった。圧倒的なコスパになった。
※4 手際と言ったが、実際はかなり大雑把にのんびりやっても大丈夫だと思う。

手打ちうどんのすすめ

米の値段が高止まりしていて釈然としないが、代わりにうどんの消費が増えているそうだ。関連業界は自ら消費者の米離れを加速させてしまったかもしれない。せめて「消費者が米を食べられないなら、自宅用もすべて出荷する」という昭和気質の農家が一軒でもいれば、消費者の憤懣もある程度和らいだかもしれないが。

それはともかく、米が高いならうどんを食べればいい。それも自家製なら、米価格の上昇分をカバーできるくらい安くつくし、健康的で味も良い。しかも作り方はネットでいくらでも見つかるが、そこにはちょっとしたコツがある。

小麦粉:中力粉を使う。置いてないスーパーも多いが、ある場合には薄力や強力より安い。薄力と強力を半々に混ぜるレシピもあるが、そこまでしなくても薄力だけでいい。逆に強力だけというのは、固くてのすのが大変なのでやめたほうがいいかもしれない。
塩:いらないような気がする。あっても良いが茹でる際に抜けてしまう上、味のあるつゆに入れるのだから、なくてもわからない。それどころか、「隠れ塩分」がないので、高血圧の人にも良い。
こね方:あるていど生地がまとまったら、米袋に入れて踏む。スーパーバッグ程度だと、破れることがある。踏んで伸ばして、手でまとめてまた踏むのを5~6回繰り返し、ラップでつつんで冷蔵庫で一晩寝かせる。
のし方:動画などにあるように、むりに四角くのそうとしない。あれはプロの技なので、できるようになるまで年季がいる。そこに至るまで不満を感じながら作ってると、そのうち嫌気が差してやめてしまう。素人が職人芸を気取って際まで四角い生地を作ろうとしている間に、プロは端っこの丸い部分を切り取って次の生地に混ぜ込んでしまう。
太さ:なるべく細く。さぬきうどんなどの太い麺をイメージして切ると、茹で時間が延々とかかった上、茹で上がりが驚くべき太さになる。
切り方:レクチャー動画だと生地の角をキチンと出して4つ折りに畳んでから、幅を揃えて切っていくのだが、下記の図のように、ルーズな作り方でも十分うまい。


その他:余分なものの入っていない手打ち麺で麦の風味がするのは当たり前。粉の風味は挽いてからの時間で急速に劣化するから、こだわりの材料店の在庫期間の長い銘柄小麦粉より、回転の早いスーパーの普通の小麦粉のほうが、麦の風味が豊かな気がする。また、生地を踏むからといって、踏まなければならないほど硬い水加減にする必要はない・そういうのはのすのが大変だし、茹でてもいつまででも芯が残る。