李子柒 麻婆豆腐

当サイトで、なぜか来場者の多い李子柒シリーズ。畑に行くシーンから始まったのでもしやと思っていたら、大豆を豆腐にする所から始まった。枝豆状態の大豆を収穫していたが、畑で乾燥する前に生で使うということなのだろう。出来上がったのは、なかなかお目にかかれないほど硬い豆腐だ。
このシリーズは不思議なところがあって、伝統的な中国の生活文化を紹介しているのだが、いつも出てくる家の立地がよくわからない。麻婆豆腐が出たからと言って四川省というわけではなく、山西省の手伸ばし麺を作ったりする。画面の隅に花や果実のなった枝が映ることが多いが、それも旬や産地がバラバラな感じがする。そういうものにとらわれない、オール中国の桃源郷をイメージしたのだろうか。

ネットを調べると、タイトルはリーズーチーと読むらしい。「染」のように見えた文字は「七」だそうだ。「李子柒」という人名だと思う。四川省の田舎に祖母と暮らす女性という設定だそうだ。田舎暮らしのスキルが身についているが、他の動画を見ると故宮博物院の一室で、研究者と薬膳について話し合ったり、都市部にある自室でこの動画を編集していたりと、おそろくべき多芸多才ぶりである。特に作業する手付きが堂に入ってるので、吹き替えかとも思って目を凝らすのだが、本人が演じている部分も多く、見分けがつかない。視聴数は膨大だが、わずか5分ほどの、スポンサータイアップのしようもない内容にここまでの手をかけて、どうやってペイしているのか不思議でならない。

大根のみぞれ煮

自分が初めて考えたと思うことでも、ネットで検索するとたいてい誰かが先に考えていて、ブログなどで公開されている。が、ごくまれに、検索結果に全く見つからないことを思いつくことがある。それがひと財産築けるようなものなら、今頃それに没頭してブログどころではないが、あいにく思いつくのはとりとめのない内容ばかりだ。例えば「大根のみぞれ煮」のように。

ちょっと聞くとどこかにありそうなメニュー名だが、みぞれ煮は大根おろしで煮込むことだから、まず誰もやってない。本当に作ったらかなり貧相だろう。名人が上等な出汁で煮込めば美味しいかもしれないが。

他愛もないことでも、グラフィカルに表すともっともらしく見えるという現象は「パワポ効果」と言い、錯視の一種である。

鶏肉詰めまるごとスイカの焚き火焼き(インド)

ぶつ切りの鶏肉にレッドチリパウダー、ターメリック、塩、生姜とにんにくのペースト、ヨーグルト、カード(自家製のフレッシュチーズ)、コリアンダーを順番に入れてよく揉み込んだら、さらに玉ねぎ、青唐辛子、レモンの絞り汁、生のコリアンダーの葉を混ぜて3時間味を染み込ませる。そして、スイカをくり抜いて、木の葉とともに漬け込んだ鶏肉を入れ、フタをして焚き火で焼き上げる。

促成肥育のブロイラーが並ぶどこかの国と違って、インドで使うのは親鳥だ。たくさんの卵を生み終えた親鳥は、肉は少々硬いが味が濃縮されていて、噛みしめるほどに味が出る。タンパク質分解効果のあるフルーツと一緒に長時間蒸し上げれば、芳醇な味を残したままふっくらと柔らかい、特別な日のための鶏肉料理になる。
やがてスイカの表面が真っ黒になったころ、あたりにはスパイスと鶏肉の蒸し上がった、どこか甘い香りが立ち込め、子どもたちにごちそうが近いことを教えてくれる。

女性は言う。

「伝統料理かって?どこの世界にスイカに肉を詰めて焼く料理があるもんかね。あたしのオリジナルさ。でも味は悪くなかったよ。なんと言ってもインド料理はインスピレーションだからね」(そんなこと言ってません)

親鳥

肉の卸業者が土曜日だけ開催する一般向けのセールで、丸の「親鳥」を手に入れた。スーパーなどで売っている「若鶏」は生後50日ほど飼育して出荷したものだが、親鳥はさらに長期間飼育して、卵を産ませたもの。ひね鶏とも言われる。若鶏は身が柔らかくクセはないが、親鳥の身はずっと歯ごたえがあり、色も味もはるかに濃い。若鶏はちょっと長く煮込むとバサバサで味がなくなってしまうが、親鳥は弾力と味わいが残る。今回は丸のまま1時間ほど蒸してほぐしてみたが、噛めば噛むほど味が出てきた。

いわゆるブロイラーの丸鶏も使うことがあるが、親鳥のほうが大きいということはない。重さはどちらも1キロ前後だが、親鳥は足が長く、全体的にスリムだ。逆に若鶏が、わずか50日前後で、ブクブクに太らされているということだろう。

ちなみに鶏は、我々の食用の鶏卵を産ませる種類と、ブロイラーの鶏肉を取る品種はぜんぜん違うらしい。だから親鳥に卵を産ませたと言っても、それは若鶏用のヒヨコを孵すための卵なのだろう。ちなみにいわゆる地鶏の味が濃いのは、親鳥まで育てて出荷するからで、品種などの差はそれほどないらしい。考えてみれば、本来家庭の庭先などで買っていた鶏は、たった50日程度で食べてしまうわけがない。卵を産まなくなるまで飼育してから落としたのだろうから、本来の鳥料理の味というのは、親鳥の味だったはずだ。いわば「鶏のジビエ」とも言える食べ方だと思うが、高くなると困るので、人気は出ないでほしい。

 

POTJIE(ポイキー)

このブログは、なぜか料理関係の記事にだけはリクエストがある。そこで今回は、以前所有していたポイキーと呼ばれる深鍋について。
これは、アフリカ全土で使われている、鋳鉄、またはアルミ鋳造の深鍋である。これで作る料理のことを指す場合もあるようだ。
買ったのは南アフリカ製だが、アフリカ全土で同じ形の鍋が作られているらしい。大きさも10センチ程度のものから、子供が入るようなもの(食べるわけではない)まで、さまざまだ。地面に直接置いて、三本の長い足の間に薪を差し込んだり、つるで火の上に吊ったりして使う。10年以上前に、好奇心だけで取り寄せてしまったが、とにかく重く、屋外で使う機会がなくてコンロに乗ようとすると、足がじゃまになる。なんとか汁受けカップの部分に乗せて使ってみたが。あまりの重さにコンロがミシミシ言った。

だが、できた料理はうまかった。なんというか、和食とはぜんぜん違う旨さで、まずくなりようがない調理法だと思った。その日取れた獲物と、そのへんの野菜を放り込んで火にかければ、誰にでもうまい食事が作れる。多少コゲても、鍋の厚みのせいか、食べられない苦さではなく、おいしい香ばしさになってしまうような感じだ。タレントがアフリカの集落を訪れて、食事に招かれるというような番組があるが、あれは決してまずいものを食べていたわけではなかったのだと知った。

また、最近はアフリカが文化的未開地帯だったわけではなく、高度な文化があったことがわかっているが、食文化についても、誰でもうまいものが作れるという方向に発展したのだと感じた。要はハダカで暮らす文化人だったわけで、それが飢餓や貧困に陥ったのは、主にヨーロッパのせいだ。


10年ほど前に手に入れたものなので、もしかしたら日本で最初だったとしても不思議ではない。正直その時は、「売れる」と思った。厚手の鋳鉄鍋ということで、使い心地はル・クルーゼやダッチ・オーブンと似ている。オーブンには入らないが、カマドを作らずに地べたで、下に薪を差し込んで使えるぶんだけ、よりワイルドだ。なにより、ル・クルーゼやダッチ・オーブンより遥かにデザインが優れている。それは長い年月、アフリカ全土に広まりながら磨かれていった機能美だ。
熱くなる蓋の取っ手を引っ掛けるフックや、料理をかき混ぜる「ポイキー・パドル」は、所有者が趣向を凝らしたデザインで、木などを削って作ることになっている。凝り性にはたまらない世界だろうし、エキゾチックな料理の飲食店でも、演出効果があるだろう。

が、持ち腐れ感が強くなってきた。そこで、ガーナのドラムの名人で、料理上手な知人が北海道に移住してきたのを機会に進呈してした。