Jimmy McHugh(1894-1969)の曲。タイトルは知らなかったが、聞いたら分かる曲。パブリック・ドメイン曲にはこういう曲も多く、見つけにくい。
今回は1954年のSarah Vaughanの歌である。サラ・ヴォーンは、エラ・フィッツジェラルドと並んで、モダンジャズ・ヴォーカルの先駆者である。サックスやトランペット、ピアノなどのモダンジャズの主役とも言える楽器が、コードやモードの制約のみで、自由なアド・リブを繰り出す時代になっても、ヴォーカルはテーマを歌って一度引っ込み、しばらく他の楽器の間奏にバトンタッチしてから、最後にまた登場してテーマを歌うというスタイルだった。もちろんそのテーマの歌い方にその歌手ならでは趣向があったのだが。
サラ・ヴォーンやエラ・フィッツジェラルドは、スキャットで自由なメロディラインを歌い、アド・リブパートを務めるというスタイルを編み出した。ヴォーカルを真にモダン・ジャズ化させ、ステージの主役として歌いまくったのである。
とはいえ、この録音ではそれ以前のひっこむスタイルである。そんなところにも、ジャズヴォーカルの変遷の歩みが感じられて面白い。