I Love Paris

コール・ポーター(1891 – 1964)の作曲。

歌と演奏はTatiana Eva-Marie & the Avalon Jazz Band。演奏スタイルはもちろん、ファッションやロケーションまで、1930年代ヨーロッパの、ジプシー・ジャズの雰囲気を再現している。歌手はいかにも美女風のメイクで愛嬌たっぷりに、バイオリンはうつろな目で淡々と。ジャズと言いながらアドリブが3分未満しかない、ごく短い曲だが、どの一瞬を切り取っても絵になっているのが楽しい。エンディングに「ラ・マルセイエーズ」を持ってくるベタな演出も、ここまで徹底した世界観づくりの中だとピタッと決まる。
よく見るあのマイクも大事な小道具だが、調べてみるとこれはSHUREというメーカーのもので、プレスリーなどのほか、ケネディやキング牧師の演説にも使われ、現在でも大統領就任式に登場するのだという。

古い曲を現代のアレンジで演奏するのもいいが、こんな風に古さをそのまま演奏するのも楽しい。どれもコンテンツとして流通しているのだから、流行にかかわらず好きな音楽を選べるのが、現代のよさだろう。その点我々世代の人間は、若い頃から流行の音楽を追いかけさせられ、追いつけなくなって諦めてしまった感がある。古き良き時代の音楽は、その醍醐味を知る古き良き人間がもっと楽しんでもいいと思う。

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ベランダ・コンポストとニューヨーク・グリーンマーケット

驚異のバイオトイレから続く)
ダンボールコンポストは最初のうちは非常に効果があるが、使い続けているうちにだんだん匂いなどが出てくる。また、長く使えばどうしても寒い季節になってしまう。そこで、バイオトイレに倣って、熱を加える方法がないかと考えた。そこで思いついたのは、FF式ストーブの背面から屋外に突き出した排気筒の熱の利用である。
最初に言ってくが、これは消防法違反であり、マンションなら共用部分の占有にもあたる。だが、思考実験は面白いし、考え続けてさえいればそのうち画期的な解決法を見つけるかもしれない。ということで「ベランダ・コンポスト」の概要は、まずベランダに小さなビニールハウスを設置する。その中にFF式ストーブの排気熱を通す。パイプを通して、排気はさらにその外にするのがいいだろう。コンポスト本体も、いずれ蒸気で壊れるダンボールではなく、木箱にしたい。また、ダンボール・コンポストでは。どんなにかきまぜたつもりでも、箱の隅に混ぜきれずに石膏化してしまう部分ができるので、木箱の内部に袋を吊って、時折振って撹拌することにした。構想はここでおしまいである。

ところで、ニューヨーク市では、近隣の小規模農家の生産物を中心街の公園に集め、「グリーン・マーケット」を1976年から続けている。スーパーなどに並ばない珍しい野菜や無農薬野菜が集まるのだが、例えばパプリカだけでも数百種類が出回るということで、個人だけでなく、市内の創造的なレストランのシェフからも評価が高い。そのウェブサイトには、コンポスト部会のメーリングリストがあったので登録してみた。

というところで、この話はおしまいである。それでも皮算用だけは膨らんで、札幌市周辺の小さな無農薬栽培農家が市の中心部で露天販売し、それを買った人が残った野菜くずなどを自宅でコンポスト化し、さらにそれを無農薬農家に還元するシステムも考えた。使うのはあくまで無農薬野菜の調理クズだけである。調理された食べ残しなどを含むと塩分や食品添加物が交じるので、無農薬の畑には使えなくなってしまうからだ。いわば意識の高い人達の間だけで回るサークルではあるのだが、ニューヨークと同じように、露天そのものやそれらを使うレストランが新しい観光資源となって、停滞気味の中心部への動員にもなるのではないかと考えた。
バイオトイレでは、し尿処理の革命というような大規模な目的ではなく、屋外施設などでの汚水処理の解決に絞ったことで、水環境の保全を実現する発明が生まれた。自分もすべての生ゴミを処理するのではなく、無農薬野菜のクズという資源を運用する小さなサイクルなら作れるのではないかと考え、その構想をまとめていくために「グリーンマーケット・サッポロ」なるウェブサイトを作ってみたりした。

もっとアイデアが煮詰まったり、情熱があれば今頃「ベランダ・コンポストの父」になれたのかもしれないが、この歳まで生きていれば、この程度のタラレバな夢のかけらには事欠かないのである。

コピ・ルアクを飲んでみた!

世の中には、最初に食べたのはどんな人だろうかと思うような、珍妙な食材がある。臭いもの、見かけがグロなもの、そもそも食品ではないものなど、多種多様だが、インドネシアの高級コーヒー「コピ・ルアク」はそのなかでもチャンピオン級だ。なんとジャコウネコと呼ばれる動物がコーヒーの実を食べて出した糞の中から、未消化の豆を取り出したものである。このたびその希少なウンコーヒーのおすそ分けにあずかったので、そのレポートである。


ジャコウネコ/画面クリックで、危険画像へ


コピ・ルアクは、その希少性からくる値段の高さのせいで、単なるゲテモノ食材以上のものとみなされている。ネットで調べたら、豆の価格でブルーマウンテンの10倍の、100g5000円程度。これはたまたま目についた価格で、ニセモノも多いそうだから、由来の確かなものがそれ以上の価格で取引されていたとしても不思議ではない。とあるカフェでは1杯3000円で出してるそうだが、常時在庫してロスの出るリスクも考えれば、むしろ安いくらいだ。

せっかく希少なコーヒーが手に入ったので、実食の前にいろいろ調べてみると、コピ・ルアクを作り出すジャコウネコは、名前にネコがついているが、ネコとは別種の動物である。肛門の側に臭腺と呼ばれる器官があり、ここから出る分泌物が香水の原料となる。香りがポイントのようなので、普段使ってるコーヒーミルを分解掃除し、洗えるものは洗剤を使わず洗ってしばらく水にさらし、洗えない機械部は湿らせた綿棒でこすって、古いコーヒーのカスや油を徹底的に取り除いた。そこまでやったのも、挽いたものを知人のソムリエのところへ持っていくことになっていたからだ。なにしろ、毎日グラスに鼻を突っ込んでは「セイヨウワライタケの香りがする」とかなんとか言ってる人たちである。「古くなったコーヒー豆の匂いが、ムスクのような華やかな香りを台無しにしてる」とか思われては申し訳ないので。

さて肝心の豆は、やや大きさにばらつきのあるコロンビア・スプレモという感じで、どれもしっかり成熟している。ジャコウネコがよく熟した実だけを選んで食べるからだと言われれば、そう思える。ただし、浅煎りだったせいもあってやたらと豆が硬い。大豆かと思うほどで、5回ほどミルを通してもハンマーで割ったようなかけらがかなり残った。

ドリップでは最初のお湯をしっかり浸透させたあと、点滴のように湯を注いだ。いつもならざぶざぶお湯を入れて、落とし切る前に引き上げていたが、お湯が早く流れすぎる感じがしたので、今回は落としきってみた。色は薄めだが、これは焙煎のせいである。肝心の味は、やや酸味があるかなという他はクセの少ない、深入り愛好派には少々面白みのない味である。また、コーヒー自体からはそれほどではないが、ドリップカスからは中華調味料の豆鼓に似た香りがする。豆鼓のように発酵しているのかもしれない。

ちなみに高額な食品には大抵「アレがアレになる」という効能がついてまわるのだが、残念ながら検証するには歳をとりすぎたようだ。ただし、ウンはついたかもしれない。

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