ウィキ・ラブ・フォークロア / LLM時代の生き残り戦略か

近年、ウィキペディアをはじめとする優良な情報源が、軒並みに寄付を呼びかけ始めた。サーバーコストその他の高騰は、大量の情報を無償提供してきた経営規模の小さな事業を直撃している。かつて検索エンジンは検索結果の一番上にウィキペディアをリストしていたが、今は真っ先にAIの回答が表示される。このせいでWIKIまで見に行かなくなった人も増えただろう。
AIに必須のLLM(大規模な文字のデータベース)の学習に、ウィキペディアの情報が大量に利用されたらしい。技術的には理解できないが、LLMは単純に文言を保存しているわけではないらしいので、権利面では単純なパクりとも言えないようだ。また短時間に情報収集したために、権利との関係が整理されなかったのかもしれない。それでウィキペディアは、庇を貸して母屋を盗られるようなことになったらしい。

そのウィキペディアでは、去年から「ウィキ・ラブ・フォークロア」を開催している。これは世界各地の地域に残る伝統行事や芸能、生活用具などの画像を募るもので、優秀者の表彰もあるという。観光案内に載るような有名なものだけでなく、地域の知られざる伝統行事なども含むらしい。個人ブログなどではこういう無名の行事の紹介はあるだろうが、AIの回答用としては信頼性が低い。掘り下げたレベルの地域情報を収集し、権威付けるウィキ・ラブ・フォークロアは、AIに対するイニシアティブを取り戻す戦略だと思う。知の殿堂らしいスマートな試みだ。

圧倒的な投資によって既存のネット世界を飲み込もうとするAIに対し、ユーザーの参加によって新たな知の原野を切り開こうとするウィキペディア。その生き残り戦略は、我々自身にとっても知の自主性を取り戻す試みとなるかもしれない。

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