ケースといったら,これだろう?

初心者がバイオリンを始めるのに,さしあたり必要な物が全て揃った,激安セット.8千円という安さもあって,自分には申し分のないものなのだが,ひとつだけ,最初から気に入らない点があった.ケースである.

とどいたケースは黒くて四角く,箱状の本体の表面は丈夫な布でできている.手で持つだけでなく,肩からかけることもでき,楽譜をしまうポケットまでついてるのだが,私に言わせれば,これはバイオリンのケースではない.

トランクがわりにして♫

バイオリンのケースは,ひょうたん型をしていて,ふたも曲面になった硬い箱でなくてはならない.そういうケースの中に入っているのはバイオリンとは限らず,マシンガンかも知れないし,禁酒法時代の密造酒かもしれない.それがバイオリンのケースというものなのだ.
セントラルパークでストリート・ミュージシャンをやるときも,こういうケースでなければ誰も小銭を放り込んでくれないだろうし,そもそもメトロポリタン・ミュージアムに持っていけない.

そこでさっそくネットで調べたのだが,驚いたことに私が考えていたようなケースは売ってなかった.もうどこも作っていないのである.強化樹脂やジェラルミンなど,実用性に富んだケースはいくらでもあるが,私に必要なのは実用性ではなく浪漫.
今さらうまくなるとは思えないのに,バイオリンを買ったのも浪漫.教室に通って,キラキラ星を練習しないのも浪漫.じゃなければDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)のほうがよほど良いのだ。ということで,ネットで旧式のバイオリンケースを探すことにした.

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