増田英二作、別冊少年チャンピオン連載中。バレンタイン・デー直前にふさわしく、ボーイミーツガールなコメディ作品の紹介を。
主人公は通学電車内でお互いに気になっているが、声もかけられないでいる高校生男女。そのことは一緒に乗り込む大人の乗客たちには見え見えで、特に中年男性の「部長」、「OL」、「大学生」の3人は、ういういしくも甘酸っぱい二人を守るのが毎日の「癒やし」だ。密かにアドレスを交換し、素知らぬ顔で二人のちょっとした仕草に反応してチャットで書き込み合う。それどころか仕事後に集まって、「今朝の二人」を肴に一杯飲んだりする。お気に入りの青春ドラマのファンのオフ会さながらだ。
当の二人は、勇気を振り絞ったわかりにくく遠回しなアプローチは次々失敗。乗客たちをチャットで身悶えさせる。さらに思いがけない邪魔が入ったり、それが時の氏神に変わったりと、エピソードづくりが抜群にうまい。普通の人々と、実在しても不思議ではないシチュエーションを使いこなし、読者を揺さぶりながら、癒やしの通学電車に乗せてしまう。奇矯な人物のキャラクターに頼りがちなコメディやマンガにはなかなかない練れたシナリオで、特に悪役や敵役がいない、善意の人だけでスリリングな展開を。
デートの約束取り付けに苦労し、待ち合わせ場所や時間が行き違ったりしていた世代からすれば、夜中でも連絡を取り合える環境で、なぜ不婚や少子化になるのか不思議に思うことがあった。が、多感な世代にとっては、アドレス交換にも告白に等しい勇気が必要だ。新しい技術の登場が、それまでのドラマづくりを変えてしまったとしても、人間が使っている限り新しいドラマが生み出されるのだと感じた。
