領海侵犯と領空侵犯

どちらもよく聞く言葉で、戦争が始まる一歩手前という印象を受けてしまうが、実態は自分が考えているものとは違うらしいことを最近知った。

まず領海侵犯という言葉はなく、メディアが作った言葉だそうだ。どの国の船も、それが例えば軍艦であろうと領海に入っただけで脅威だとは見なされない。問いかけに応答しないまま長時間領海にとどまったりすれば、海上保安庁の巡視船などに追い返されることはあるが、通り過ぎるだけ程度ならフリーパスである。
また、領海のど真ん中であっても、海峡は公海扱いなことが多い。津軽海峡や、トルコのボスボラス、ダーダネルス海峡などがそれで、国際海峡と言うらしい。船舶がSOS信号を受信したら国籍その他に関わらず救助の義務があると言うし、海の上には、国レベルの法律等以前の海の男の掟がある感じだ。

一方領空侵犯という言葉はある。領空とは領土・領海の上空だが、航空機の場合そこまで侵入されるとあっという間に都市などに着いてしまうし、核を持っている可能性もある。そこで、領空より遠くに防空識別圏を設定し、越えてきた航空機に対しそのまま進むと日本の領空を侵犯することを警告する。このときの自衛隊機は、警察や沿岸警備隊の職務の代行という立場なので、問いかけから始まって、引き返させたり着陸させたりする。警官の職務質問と同じである。これはどの国の空軍でも同じだそうで、警告射撃を行うことがあっても信号弾の代わりであって、攻撃ではない。もちろん撃墜などはできない。発砲して相手を撃墜できるのは攻撃を受けての正当防衛か、あきらかに住民を狙っている場合である。また、大韓航空機撃墜事件以後、どんな場合でも民間機を攻撃できない。これらはみな国際ルールである。要は、銃弾の一発や二発がきっかけで戦争が起こったりはしない。人類は、過去に何度も戦争を興してきたが、そのつど同じことは繰り返さないよう、国際社会も進化してきたということだ。

進化していないのはマスコミだ。新時代の国際ルールの周知と啓蒙に向けて社会をリードするというならともかく、領海侵犯などという言葉まで作り、不安をかきたてて100年、200年前の戦争当時さながらの未熟な世論へと、社会をミスリードしているように思える。

※9月23日のロシア機による領空侵犯では、防空識別圏に入ってから何度か意図的に領空の端をかすめてる。その間、自衛隊機が通告、警告をしていたはずなので、かなり挑発的だ。とはいえ、自衛隊機の行動はあくまで前述の通り警察の職務の代行なので、そのまま交戦したり、ましてや戦争になったりはしない。

防衛省「ロシア機による領空侵犯について」より

4 thoughts on “領海侵犯と領空侵犯

  • 9月 26, 2024 at 10:13
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    ♬ロシア人は唄を歌い自ら慰める~とコーラスで歌っていましたが、最近は変わったんですかね。バレーや芸術全般や、スポーツや音楽や文学やサーカスなど全てに優れているロシア人と思って居ましたが、彼ら彼女らは現在も活動・活躍しているのでしょうか?気になりますね。随分前ですが札幌は中の島にロシア人の女子学生寮があって、我が妻が暫くの間、日中だけ、そこの舎監をやって居ました。ロシアの若い女性たちは皆んな色白で美しくスタイルの良い可愛い人ばかりでした。食生活なのか?寒冷地なのか?何故か?年取ると皆んな太るらしいですがね。また、不思議にも、禿げた男性は何故か?女性にモテるらしいですね。男性ホルモン旺盛と言う事でしょうかね。

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    • 9月 26, 2024 at 12:04
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      ソ連崩壊の後、職場のなくなったボリショイバレー等の団員が日本に出稼ぎに来てたそうですが、町のバレー教室で世界的アーチストに習えると、大好評だったそうです。芸は身を助けるんでしょうね。日本でも昔は禿の偏見はなかったのが、ハゲランスのキャンペーン以降、カッコ悪いというのが常識化したとか。マーケ的には大成功なんでしょうけど。

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  • 9月 26, 2024 at 06:06
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    パイロットもその辺は教育されているのでしょう。でも西部劇でさえ背後から撃つのは卑怯者ですし、ましてや日本の武士道にも名乗らずに斬る事も礼に反する訳ですが、国籍も隠したお互い血の気の多いパイロットなら危険ですね。挑発に乗ってしまうと相手の思う壺にハマり兼ねませんからね。スクランブルで終わって欲しいものです。

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    • 9月 26, 2024 at 08:56
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      領海侵犯への対応は警察の代行なので、極端に言えば交戦がはじまっても戦争のきっかけにはなりません。パイロットにも正当防衛の反撃は認められてますが、そのまま戦闘をエスカレートさせれば重大な軍規違反で軍法会議です。戦争のきっかけになるのは、抵抗できない一般人に被害が及ぶ場合で、今回来たのは哨戒機なのでこれを撃墜するのはやりすぎになります。逆にミサイル発射可能な機が投下孔を開いて来たら、領海のずっと手前で撃墜するかもしれませんが。今はどの国も報復や資源、領土の獲得、主義主張などのために、戦争を起こさないことになっています。戦後の世界がせっかくそこまで持ってきたのに、ロシアはなんてことしてくれたんだ、というのが世界の流れです。

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