アドリブ、そしてブルース

弾きやすくてサマになる曲を探し,DやAに移調してから,難しい部分をなるべくアレンジして簡単にしてから練習する.これが私の練習の基本だが,時々アドリブの練習もしている.アドリブは難しいもので,譜面通り弾く以上の技術が必要だと思ってる人も多い.だが,譜面のある曲はどんなに難しくても,その通り弾かなければ曲にならないが,アドリブなら自分のレベルの範囲内で弾いても,それはそれで自分なりのアドリブである.たとえ間違っても,最初からそう弾くつもりだったという顔をしてればいいのだ.(バレバレだけどね)

最近は,あまりアドリブという言い方は聞かない.代わりにインプロヴィゼーションと呼ばれることが多いが,いずれにせよ,「即興」という意味ではない.曲のコードに合った,自分なりのフレーズを弾くことなのだが,別にその場でメロディが湧き上がらなくても,事前に作っておいたフレーズを弾くだけでも,立派なインプロヴィゼーションだ.

とはいえ,良く知ってる曲でもコードが頭に入ってるわけではなく,ましてそれに合わせたフレーズなどおいそれとは出てこないだろう。そういう時はブルースだ.ブルースはごく単純で覚えやすいコード進行の型のことである.「鬱な気分の曲」という意味ではなく,明るいメジャー(長調)のブルースもある.

これはAのブルースの伴奏部分である.コード進行など知らなくても,ああこの感じかと思うはずだ.普通の曲なら,伴奏だけ聞いても何の曲だかわからないくらいだが,ブルースだけはわかる.ニューヨークのハーレム(黒人の多い住宅街)では,若者がジャズを始めるとき,楽器を持ち寄ってコードのルート音(動画中のブルースなら,「ラ,レ,ラ,ラ/レ,レ,ラ,ラ/ミ,レ.ラ,ミ」)だけを,延々とならし続ける.そのうち飽きてきて少しずつオカズ(装飾音)を入れたくなるので,自然にブルースのインプロヴィゼーションが出来上がっていく,という風に練習するそうだ.昔の話だろうけど.

次回「アドリブ,そしてブルース2」(2/27 AM0:01 投稿予定)
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カテゴリー「Bluesへの道」

なんでもアレンジ

移調するだけでなく,弾きやすいようにメロディをアレンジしてしまうのもいい.アレンジや編曲というと,原曲を複雑で高度に変えてしまうことのように思いがちだが,簡単に弾きやすくすることもできる.大抵のメロディの中には,無くても同じ曲に聞こえる音がいくつもあるので,これらは省略してしまう.クラシック曲を自分で編曲しまっていいかどうかは知らないが,ポピュラーならむしろ演奏者によって編曲が違うのが当たり前だ.

とはいえ,いきなりアレンジはできないかもしれないので,動画サイトなどで同じ曲の,別な人の演奏を聴き比べてみよう.以下はフィドルの定番,テネシーワルツだが,プレイヤーによってテンポや装飾音の付け方,調などがけっこう違う.

この人はバイオリンにつきものの,手を震わせるビブラートが案外少ない.クラシック風の演奏では,やたらと指を震わせてビブラートをかけることが多く,やりすぎてテンポを外してしまってるんじゃないかとという人もいる.自分がまだできないせいもあるが,それに比べると気取りがなくていい演奏だ.

やや早めのテンポで,いろいろなテクニックを使いながらも安定して弾いている.見てわかるように,ネット指導の動画である.youtubeなどには,バイオリンに限らずピアノ,ギター,民族楽器でも何でも,しかもありとあらゆる曲の指導動画がある.この動画のように,肝心な部分はモザイクで,全部見たければ視聴料をというところもあるが,所詮ネットなので格安だ.私が独学でも良いんじゃないかと思ったのは,こういう動画があったからだ.


子供…しかも上手い…移調しているのは,弾きやすくするためだろうか.

いろいろな演奏を見比べると,テネシーワルツという曲の本質というか,魂がわかってくるような気がする.難しいテクニックを駆使するだけでなく,さらっと簡単に弾いてるところなどは,大いに参考になる.しかも動画はこれだけじゃない.
昔は,同じ曲を違うプレイヤーやアレンジで聴き比べることは,なかなかできなかった.今は,弾いてる姿や指使いまで見ることができる.楽譜には書いてない,自分がどういうふうに弾きたいかが,徐々に見えるような気がしてくる.

次回「アドリブ、そしてブルース」 (2/23 AM0:01)投稿予定
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魂柱記

今日はバレンタインデー.そういえばこれまで,本命チョコをもらったことがない.61歳といえども,ティーンエージャーの頃には,すでにもらってる奴はもらってた.くそ、つまらんことを思い出してしまった.若い人に聞かれたら,戦後のドサクサでそれどころじゃなかったと言おう.最近はこれでケムに巻くのが得意技だ.実際は終戦後ずいぶん経ってから生まれたわけだが,若い人は基本的に素直だから,黙って感心してくれる.いっそ2.26事件を使ってみようか.

さて,以前書いた「香り立つバイオリンの調べ」では,ケースのおまけについてきたバイオリンの魂柱を適当に立てて試奏するも,一番高い弦のAの音が出ないまま放置したが,気分も新たに魂柱の調整に取り組んだ.
魂柱の位置魂柱は図のような位置に立てなければならないらしいが,改めて自分の立てた場所を覗き込んでみると,前後で見るとブリッジに近すぎ,左右でいうとちゃんと片方のブリッジの足の下になかった.
魂柱立ての奇妙な形の部分を引っ掛けて,また倒れないことを願いながらずらしていくのだが,図を見てわかるように,バイオリンの内部は場所によって天地の高さが違う.となると,正しい場所に設置するには,微妙に長さの違う新しい魂柱を何本も用意しないとならないことになるが,なんとかごまかしが効くことを願って,少しずつずらして行った.

弦を緩めてしまうと,また魂柱が倒れるかもしれないので,少しゆるめただけにして,押したり引いたり.結構力がいる上に,ギシギシ音がするのがなんとも不安だ.そうやって魂柱をずらし,弦を貼り直しては鳴らしてみることを繰り返した.が、どんどん悪くなる.以前はAの音だけ出なかったのが,Aの上下の半音まで出なくなった.いろいろなサイトを見ると,魂柱の役割は音を伝えることとあるが,どう考えても単なるつっかえ棒で,しかも音を響かせる役に立ってるかどうかはわからないが,場合によって邪魔をすることだけは確か.そんな厄介者に思えてならない.現代の技術で,もっと合理的な素材なり構造なりが開発できないものか.

鳴った!!
鳴った!!

などとぼやきつつ,所詮オマケのバイオリンだから,これは諦めようと思い始めた.そしダメ元で,激安バイオリンのほうに最初からついてたブリッジと取り替えてみたら...鳴った!
問題の音もそれ以外の音も同じように.以前の寅さんのような威勢のいい音ではなく,やや鼻づまりっぽくなったが,音が出るのである.ブリッジのせいか,それともいじくり回した魂柱との総合的なバランスか.何でもやってみるものだ.ただし,もともとこのブリッジは弾きにくいのでとりかえたくらいなので,扱いづらい.そのうち新しいのを削ってみよう.

バイオリンを覚え始めたばかりの時期に,手を加えても惜しくないような2台めを手に入れたおかげで,いろいろ比べてみることができた.それがなければ,ブリッジを修正すれば済むようなことでも,演奏技術でカバーできるようになるまでひたすら練習し続けていたかもしれない.

次回「なんでもアレンジ」(2/18投稿予定)
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