重力波の観察がなぜこれほど難しかったのか?それは極めて弱い力だから.電気や磁力があるところに電波や磁力線があり,熱のあるところから赤外線が放出されているように,重力があるものは重力波を出しているはずだ.そのことは,昔から予測されていた.だが重力というのは非常に弱い力で,例えば巨大な地球が全身全霊をふりしぼって重力を出しても,人間がぺちゃんこになることもなく,立ったり歩いたり,ジャンプできてしまう程度のパワーしかない.

そんな弱い重力から出る波動だから,非常に観測しづらい.しかも観測装置の周囲にはいろいろな物があり,そのすべてが重力を持っている.ましてや大きな地球の上で重力波を観測しようと思っても,ロックコンサート会場で鈴虫の音色を聞き分けるようなことになってしまう.だからどうやって観測したのか,どうしてそれが重力波だとわかるのかは,多分相当難しい内容になるのだろう.
重力波がどんな役に立つかは,計り知れないものがある.それはちょうど人類が初めて赤外線や電波,磁力線を発見したのと同じだけの価値があることは間違いない.宇宙は,かつて誰も想像しなかった新しい姿を見せてくれるだろうし,携帯電話をトイレに落ちる直前で救うことだってできるかもしれないのだ.