今日はハロウィン

nightmare
今日はハロウィン.従来日本になかなか定着しなかったこのお祭りが人気になったのは,映画「ナイトウェア・ビフォア・クリスマス」のおかげだろう.この映画は,「ストップ・モーション・アニメ」という技法で撮影されている,人形を少しずつ動かしてはひとコマずつ撮影する手法で,フィルムで撮られていた時代は,現像するまで動きを確かめる方法がなかった.つまり1秒24X1カット分の秒数分のコマ数にあたる動きを,撮影者の頭の中に入れていなければならなかった.

「ナイトメア」の時には,デジタル撮影できるようになった.人形をひとコマずつ動かすのは同じだが,その場で一連の動きを確認しながら撮影ができるようになった.だからといって,撮影が楽になったからヒット作になったわけではない.管理しやすくなった分,指先の動きや表情ごとの顔の入れ替え,何体もの人形の同時の動きなど,従来の何倍もの手間をかけたのである.

単に楽をしたり,経費削減のためだけに情報機器を使うのは良し悪しである.リゾート暮らしの引退者ならいざしらず,現役ビジネスマンが楽をしても競争に負けるだけだ.かつて営業マンなら,100軒以上の得意先の電話番号を覚えていた.今は携帯を忘れると,ただのでくの坊だ.そうなるとデジタル機器は諸刃の刃である.誰もが高度に情報武装しあっている現代のビジネス環境では,むしろそういう助けを受けられない非常時の対応で,真価が決まるかもしれない.例えば携帯は活用するが顧客の番号も覚えている.情報機器の誘惑に甘えない物がいたら,それこそが勝者となるだろう.
残念ながらデザイン業界はデジタル機器,情報機器の誘惑に負けてしまった感がある。紙と鉛筆だけで利益を生み出していた現場に,大量のPCを導入して固定費を増大させて収益を悪化させただけでなく,安直に凝ったデザインができることに慣れてしまって,例の大パクリ事件に代表されるように,モラルまで下げてしまった.

※余談だが,英語で「パンプキン」とは,ハロウィンでおなじみの黄色いカボチャのことだけを指す.日本で一般的な濃緑色のものはスカッシュ(壁打ちテニスと同じスペルと発音)という.

次回「プロデューサーズ」(11/4公開予定)
乞うご期待!

ハラール

食品スーパーで,ハラール食品のマークを発見した.ハラールは,イスラムの戒律に則って処理された食品という意味で,イスラム教徒はこれ以外の食品を口にしてはいけないという.まだそれらしい人を見かけたわけではないが,東南アジアなどから相当数の観光客が来ているそうだから,このスーパーでもこれからイスラムの客が増えるのだろう.
また,空港やホテルでも,イスラム教徒のために礼拝所が用意されているという.礼拝所と言っても,仏教やキリスト教のように”御神体”があるわけではなく,床に絨毯が敷いてあり,メッカの方角を示す標識とコーランがおいてある小さな部屋らしい.

日本とイスラム圏とは,はるか昔からシルクロードで結ばれていたらしいが,一般人が交流するようになったのはごく最近だ.本格的な交流が始まったばかりの時期に,そういう配慮がなされ始めたというのは,非常に重要なことだと思う.イスラム圏の,今後何百年にも渡る日本への印象が,今決まるからだ.
イスラムの厳しい戒律は,他宗教の人間に強制するものではない.逆にほんのちょっと,そのへんを配慮してくれれば仲良くしますという,イスラム教徒からの申し出のようなもの.ある意味とてもわかりやすい人々なのである.それを思えば,施設内に小部屋を用意したり,たとえは悪いが,トイレやタバコ程度の時間を礼拝のために席をはずすくらい,日本人からすればどうということもないはずだ.

仮にテロリストが日本を狙ったとして,空港やホテルに礼拝所があり,スーパーにハラールが売られていることを知ったらどう思うだろう.そして万一事件を起こした場所に礼拝所があったら,他ならぬイスラム圏の人々はどうするだろうか.中東には,ナントカ国を憎む善良なイスラム教徒が何億人もいて,連中など足元にも及ばないほど強力に武装され,士気の高い軍隊もあるのだ.
そう考えると,日本はごくごく小さなコストで,実にうまくイスラムに対応しているといえる.これから日本が独自の移民政策をとり,あるいは国際社会と協調して中東問題に関わる場合にも,日本の立場が理解されやすくなるだろう.日本は今,偉いさんの活躍ではなく,民間のほんのちょっとした配慮で,国際政治や安全保障,経済にかかわる大きなテーマを解決しようとしている.

ちなみに,戒律に則った処置を施した食品と言うと,鮮度を重んじる日本人は目黒のサンマのような,味の抜けたようなものを想像してしまう.が実際のハラールは,使って良い食材や器具が昔のまま厳密に決められているので,余計なものが入らない自然食品のようなもので,安全で味も良い.

次回「ハロウィン」(10/31公開予定)
乞うご期待!

ビブラート

ビブラートは難しい.ここ数ヶ月,時間を見つけて練習しているつもりなのだが,さっぱり条雑しない.この歳になって,未だにあきらめたほうがいいのか,もう少し続けたほうが良いのか見極めもつかないというのは珍しい.おまけに腕や手首が痛くなってくるので,そもそも年齢的に無理なのかと思うほどだ.
また,人差し指が多少動くようになっても,中指に換えると動きが止まってしまう.薬指や小指だとなおさらだ.これを曲の流れの中で,意識せずにできるようになるとしたら,年単位の修練が必要かもしれない.

しかし,ビブラートの練習は単調だが,決して退屈ではない.安定した長い音を出した上で振動させなければならないから,これまでいいかげんにやっていた弓の動きを見直すことができる.長い音のためには弓を根本から先端まで,まんべんなく使わなくてはならないが,今までどうも動きが楽な真ん中あたりばかり使っていたようだ.特に手元のほうになると,弓の角度が曲がって,となりの弦を触ったり,ギチギチ音が出たりする.また、中ほどから先の時は弓を弦の上に乗せてしまってもいいが,手元に来るとテコの原理で,それでは力がかかりすぎてしまので,持ち上げるくらいの気持ちが必要なようだ.
そして音程.最近は季節の変わり目以外は調律の必要もないくらいだが,練習中はチューナーをつけっぱなしにして,ビブラートによる指の位置ずれもチェックする.音程から弓の角度,手首の振動まですべてを同時に意識しながら弾くので,単調なロングトーンも,弾いてる方はスリリングで楽しい.

次回「ハラール」(10/26公開予定)
乞うご期待!