バイオリンを始めた頃に知っていたかったと思うことが、いくつかある。特に弓を使う楽器は始めてだったので、その動かし方にはなかなか苦労させられた。
例えばバイオリンは、ギターのようにポンとはじけば余韻が続く楽器ではなく、それぞれの音符の長さの分だけ弓を動かし続けなければならない。ゆったりと流れるような演奏がバイオリンの魅力だが、そのためには一つの音をたっぷりと弾き、次の音の直前に急いで指や弦をかえなければならない。このときにドタバタやるので雑音が出たり、他の弦も一緒に弾いてしまう。
また、原則的にひとつの音から次の音に移る時に、弓を逆に動かす。そこで下記のようなメロディが続くと、片方にばかり弓を動かずので、弾く位置がズレていってしまう。何か単純な勘違いをしているのかもしれないが。
また、弦と弓は一定の位置、一定の角度を保ったまま接していなければならない。弓を倒してもいけない。弦の上に真っ直ぐなレールが敷いてあって、その上を弓が行き来するように動かさなければならない。
が、関節を曲げると腕や手は弧を描いてしまうので、手首の角度などで調整し、とにかく弓の位置や角度を一定にするのだが、これがなれないと難しい。理屈でわかっても、そんな動きをしたことがないのだ。
また、弓の張り具合もわかりにくい。あまり強く張ると弦の上でポンポン跳ねるので、棒がまがったままの、ゆるい状態に張ったほうが良いようだ。演奏動画を見ても、けっこうゆるく張ってる人が多いように思う。
弓ではないが、弱音器は意味がなかった。ブリッジにしっかり据え付けなければならないので、ついブリッジの位置が動いてしまう上、そもそも他人に迷惑になるくらいの大きな音が出せるようになるのが、最初の課題なのである。
下手くその弾くバイオリンというと、ノコギリでも引くようなギコギコ音を想像しがちだが、ただ音を出すだけなら、そう難しくはない。が、たえず弓を動かしながら、これらのポイントにまんべんなく注意を配るのは大変だ。リズムや音程に注意がいくと、弓への注意がおろそかになり、おかしな位置で弾くことになって雑音を出してしまうのだ。これらは教室に通えばすぐ教わることかもしれない。が、自分の性格上、一度懲りて身にしみてからでない身につかない。試行錯誤しながら、何かに気づくというのはなかなか楽しい経験ではある。