皇位継承の儀と封禅

先日、皇位継承の儀が執り行われ、いよいよ日本の令和時代が始まった。この元号については日本国内はもちろんだが、とりわけ中国人の間で、大きな話題になったようだ。平成までずっと中国の書物を題材にしてきた元号を、初めて国書からとったことについては、日本人の自由だという者もいれば、日本の中国離れ宣言だという声もある。万葉集の歌には漢詩の元歌があるので、中華文明から脱していないという説もある。元号は自分たちが始め、数千年の長い間使い続けた後、清の宣統年代を最後に(※)自らの手で捨て去ってしまったのだから、複雑な気分だろう。さらに、中国人であれば今回の皇位継承の儀の随所に、中国文明の名残を見てとれるかもしれない。

そこでどうだろう、中国も負けずに、習近平氏に中国歴代王朝皇帝の中でもごく一部の皇帝だけが行えたと言われる「封禅」を行ってもらっては。

封禅とは、帝王が自ら「泰山」に登って、天と地に自らの即位と天下泰平の感謝を捧げる儀式である。富士山が日本を代表する山であるように、中国では、山東省の泰山は特別な聖地と考えられていて、山とだけ言えば泰山を指す。ここで封禅を行ったのは、皇帝の中の皇帝と自他ともに認める10数人だけである。
最も有名なのは秦の始皇帝だが、現在の中国の国際的な存在感は、始皇帝の世界史級の知名度にもひけをとらないだろう。そして中国国内はもちろん、世界中の華僑社会、日本などアジアの中国文化の影響圏に大きなインパクトを与えるだろう。もちろん賛否両論だろうが、共産主義的にまずいなら、人民の名でとかなんとか言って…。これは、どこまで不謹慎なことなのか、書いてるほうもわからないほどだが、要は歴史に名高い封禅をネット中継で見てみたいのである。

※中国最後の元号は
・清の「宣統」(1909-1911)
・中華民国の「民国」(1912から台湾などで継続使用中)
・袁世凱による中華帝国の「洪憲」(1916)
・満州国の「康徳」(1934-1945)
のうちのどれかわからない。