Obo Addy コレクション

ガーナのマスタードラマー、オボ・アディ氏が2012年に亡くなり、今年になってその楽器コレクションが、アメリカのリズムトレーダー社から売りに出されている。

オボ・アディは、ガーナの首都アクラ一体に住むGA(ガ)族の出身で、伝統的なガーナ音楽の継承者である。同じくGAのマスター・ドラマーで日本でも活躍していたアジャ・アディが亡くなってから、この人のCDなどが、正統派のガーナ音楽に触れる数少ない手段だった。来日はしていないとおもうが、アメリカなど各国で活躍していたようだ。

コレクションのリストは以下の通り
https://docs.google.com/document/d/15ypTGGMoJifSWpZlhjzanQrhcGJNw-uVykJhfV26M24/edit?usp=sharing
どれも、現役のプレイヤーが愛用していたものとしては破格に安い。特に私にもなじみのあるGA族の太鼓は、新品よりも安いくらいだ。こういう楽器は調整に手間がかかる。ときには大工仕事なみになるので、その手間の分も考えると超お買い得品である。kpanlogoやobrenton、dgiliなどの、GA族、LOBI族の楽器については日本にも何人か継承者がいるので、もし、非常に意欲的な方が買ってしまったとしても、ご連絡をいただければ多少は情報提供できるが、それ以外のEweやAshantiの楽器は、きちんとした指導を受けることができないと思うので、持ち腐れになるかもしれない。中にはセットのものもあるので、誰か現役で活躍中のミュージシャンがまとめて買ってくれるのが一番だと思う。ちなみにkpanlogo、obrenton、dgiliは、セットではないので、コレクションがバラけても問題ないだろう。

発売元のリズムトレーダー社は、初めて知ってからかれこれ20年近く経つ、このジャンルでは老舗だ。私も小物を何点か取り寄せたことがあったと思う。こういうことはすべて自己責任だが、当時の印象や、コレクションの価格設定などを見ても、良心的な業者だと思う。
ただし、ネット通販サイトと違って、日本人には商習慣の違いなどが気になるかもしれない。まずはメールで挨拶を送り、送金方法を確認するところからはじめなければならないし、そのメールの返事もすぐ来ないかもしれない。税関で止めたられて立ち会い開封しなければならなくなるかもしれないし、保険や関税、乙仲手数料、国内運送費など、思わぬ費用がかかるかもしれない。また、一品物を長旅させるのだから、例えば皮が破れてしまって届くかもしれないが、その時は自分で張り替えるくらいの覚悟が必要だ。すべて自己責任、人生と同じだ。
(※これくらいに言っておかないと、最近は難しい人が増えたから...)

オボ・アディの演奏は、少ないながらいくつか動画が残っている。

カテゴリー アフリカのリズム

北朝鮮 核の資金源:「国連捜査」秘録

北朝鮮 核の資金源:「国連捜査」秘録、古川 勝久 (著)を読んだ。面白い!個人、企業、国の実名で語られる、北朝鮮制裁決議違反の実態。「あの時のあの事件」の背景、公表されなかった事実が目の前で解き明かされていく驚き。スパイ小説も目じゃない面白さだ。

国連には、制裁決議案にもとづいて、事務総長が直接任命する「専門家パネル」という組織が存在する。メンバーは安保理常任理事国などから選ばれた8名。どの組織にも属さず、命令系統も就業規則もなく、個人オフィスと無制限のビジネスクラス利用権限を与えられ、世界中を飛び回って制裁違反の企業や取引を暴き出す。作者は、この「専門家パネル」の一人だった。

国連で制裁決議が出たからと言って、各国がいきなり特定の企業や取引を規制できるわけではない。自国の調査でどれほど怪しかったとしても、それだけで企業や取引を規制すれば、それはその国の判断で規制したのであって、国連決議に基づくとは言えない。国連の制裁委から指定された企業名などを受け取って、はじめて国連制裁決議に基づく制裁となる。その情報を作成するのが専門家パネルの役割で、制裁決議に実効性を与える役割と言える。

制裁違反の実態を調べる著者の活動は、「足で稼ぐ」調査だ。疑わしい企業の所在地や出品する展示会に出向き、経営者や取引先関係者を洗い出す。
また、各国から集められたメンバーの中には、当然スパイもいる。調査の途上で自国の企業名が出るたびに活動の足を引っ張り、制裁委への報告書への署名を拒否する。そして、最後には母国が拒否権を発動し、次年度の専門家パネルの存続そのものを取り消そうとする。彼らを説得し、時には妥協しながら、なんとか実効性のある報告書を作成するのも、著者の仕事だ。

我々は、国連制裁が決議された瞬間、不正な取引が一斉にストップし、瀬取りのようなごく一部の隠密取引だけが残ると思いがちだが、実際は、専門家パネルなどが暴き出したケース以外では、多くの不正な製品が、おおっぴらに展示会に出展されて商談が行われ、まっとうな企業のまっとうな取引として港から出荷されている。
専門家パネルの報告に基づく出動の際も、国ごとの捜査能力、捜査体制の違いが大きい。たとえば一見ただの金属棒にしか見えない最先端技術により規制対象物も、日本などでは発見できるが、途上国などでは区別がつかない。
また規制対象も多岐にわたっている。例えば北朝鮮の軍事パレードでおなじみの、ミサイル発射台つきトラックも、元はアーム部が精密に操作できる日本製のクレーン車の台車部分だったりする。こういうものも、規制対象以外との取引の名目で、堂々と送り出されていく。

工場から直接ノーチェックで海を渡っていくコンテナ、申請データ上の品名や行き先チェックだけで送り出される製品。我々の生活を便利で快適にしてくれた物流システムの合理化の、負の代償を知った気がする。

李子柒 / 馬乳酒、仔羊の丸焼き

今回の李子柒は馬乳酒。馬乳酒と言えばモンゴルの発酵酒が有名だが、この動画は舞台が四川省なせいか、蒸留酒だった。お婆さんの民族衣装が独特だったので、画像検索すれば何族かすぐわかるだろうと思ったが、四川省にはイ族、姜族、チベット族など、かいろいろな少数民族がいるらしく、どれも派手な柄の服を着ていて区別がつかなかった。

馬乳酒と言えば、以前母がツアーでモンゴルに行った際コンダクターから、現地の人は平気だが日本人はアメーバ赤痢にやられるから、勧められても馬乳酒は絶対飲むなと言われていたにもかかわらず、同行者がみんなヤラれてしまった。母は、大学の研究室に務める叔父が、内緒で試薬を使って調合した薬を持って行ってたので無事。その時薬を配った人からは、未だに丁寧な手紙と貢物が送られてくるらしい。

こう書くとちょっと良い話風だが、帰ってからそういう危ない話を聞かされる息子としては、たまったものではない。ダメだと言われたものを飲んだり、怪しい薬を持ち込んだり、他人にも飲ませたりと、問題だらけである。小言を言ったら、流石に母も反省し、次からは息子に内緒で危ないところへ旅行するようになった。