本年も宜しくおつきあいのほどを。
フォントを作ってみた。書体の開発は美的センスもさることながら、緻密な計算と忍耐が必要な大仕事だ、と言われてきた。が、今でもそうなのか。定規やコンパス、烏口を使って一文字ずつデザインしていた時代ならともかく、画像処理ソフトで誰でも正確な図形や線が引けるのだから、基礎的なスキルが低い人も、じゃんじゃん書体をデザインしてもいいはずだ。完成度は低くても、書は人なりで、いわゆる味のある文字になるかもしれない、と思ったのだ。
やってみたら、流石に時間はかかったが、それほど手間ではなかった。グラフィックデザインは、現代ではフォントを選んで組み込むが、その前は写植を発注して台紙に貼り込んでいた。フォントのように手元でサイズを自由に変更するわけにはいかないが、書体そのものは選べばよかった。さらに写植以前となると、すべて面相筆で書いたり版木に彫ったりしていた。だんだん作業が楽になってきたわけだが、手書きの時代に比べれば、一つの画面のためだけに1書体を開発してもいいくらいだ。
便利なツールで作業が楽になるのは良いことだが、それで楽するだけなら、怠けているのと変わらない。作業が楽になった分、その便利なツールを使ってより一層ややこしいことをやらなければ、 デザイナーの社会的ステータスも収入も、下がっていって当たり前だと思う。
