伝統的なものだけでなく、身につけた人間の生まれ育った風土や専門分野、趣味をモチーフにした家紋、時代性を盛り込んだ家紋があったら楽しい。それが家紋という日本独自の文化の拡大発展につながるようなら、なお面白いと思う。そこで楽器をモチーフにした家紋を考えた。第二弾は巴洋琴。

ピアノの和名は洋琴だそうだ。グランドピアノの向きを変え、いわゆる巴型に組み合わせたら、家紋らしくて収まり良く仕上がった。あまりいじくらずに簡単にできてしまったので、なかなかお気に入りである。
グランドピアノを個人で持っているという人も、いなくはないだろうが、我々がお目にかかるのはもっぱらホールなどだ。日本のホールには、地方都市でもグランドピアノが置いてあり、メーカーを選べるところもある。しかも常に調律済みなので、世界中のピアニストに評判がいい。
ソヴィエトの崩壊後、政府のバックアップがなくなった音楽家がこぞって来日するようになった。そしてホールの音響設計の良さと調律されたピアノがあることに、喜んだという。その後日本では、地方都市でも世界的音楽家の演奏会が開かれるようになった。日本からの生徒を優先的に受け入れる巨匠や、世界ツアーに日本人調律師を同行させる巨匠もいたという。クラシック界のことなのでよくわからないが、世界的コンクールに入賞する日本人も増えたはずだ。地味な仕事を丁寧にこなし、評価を得るというのはいかにも日本人らしいエピソードだと思う。
ところで最近のコンサートでは、横っ腹にデカデカとメーカー名のついたグランドピアノが登場する。メーカーとホールのウィンウィンはわかるが、ピアノの形や音色で分かる人もいるだろうし、プログラムに書けば済むことである。アーチストの芸術世界が主役なのだから、脇役は奥ゆかしくしててもいいんじゃないだろうか。

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