ピンソン肉店

パリとルマンの中間あたりに位置する街、シャルトル。そのソレイユドール通りで長年営まれてきた肉店を紹介するドキュメンタリー。1892年に建てられた赤い大理石をベースにした建物は、フランスの歴史的建造物にも登録されている。
扱っているのは牛と羊だけで、豚や鶏はおいていない代わりに仔牛がある。そのへんが日本の肉屋とは違うところだ。店でしっかり熟成させた肉は小豆色で、筋や脂を掃除して、客の料理に合わせて下ごしらえする。ひき肉を専用の型に入れてから渡すのは、そのままハンバーグのように焼いてしまうのではなく、昔ながらのヨーロッパの肉店のやり方だ。

建物や主人のたたずまいから仕事の仕草まで、ちょっとマネのできないレベルで全てが絵になっている。これも、長い年月をかけて培ってきたものだからだろう。今からマネをしたくても,、おそらく衛生面などでこれと全く同じやり方を新たに始めることはできないだろうと思う。
残念ながらピンソン肉店は現在では廃業し、店だけが残っている。ストリート・ビューでも確認できるが、たとえ文化財として残ろうと、お店というのは商品と店員と客がいなければ抜け殻にすぎない。

明けましておめでとうございます

本年もよろしくお付き合い願います。

今年は丑年。牛といえば北海道ではホルスタインが馴染み深いが、あの独特の白黒模様の下の地肌も白黒だそうだ。そして、哺乳類で地肌まで模様があるのは牛だけらしい。例えばシマウマの地肌は黒、虎やヒョウはうす茶色、配色の似ているパンダも肌色一色だという。
ホルスタインは皮膚の色も毛と同じ配色で、厳密に言うと黒い地肌のところどころが白くなった皮膚だ。ちなみに動物園で治療などのために虎の毛を剃ると、うっすらとした縞模様が残って見えるが、これは人間でもヒゲを剃ると皮膚の下に残った短い毛が透けて青く見えるのと同じ理屈で、地の色はあくまで一色らしい。ムラっけがあっても裏表はないというのは、なかなか好感が持てる。

ホルスタインは好奇心の強い動物だ。道東では国道のそばまで牧場の柵があるような場所が多いが、牛を眺めているとゆっくり近づいてきて、そのうち柵の向こうが牛だらけになってしまう。人間に利用される一方でも、泰然としてくさらず、好奇心を持って生きるなど、我が身のまだ遠く及ばぬところである。