ダンボールコンポスト

以前、ダンボールコンポストを試したことがある。これは大きめのダンボール箱に「ピートモス」と「籾殻くん炭」を満たしたところへ生ゴミを入れると、分解されて最後には堆肥になるというもの。匂いもないので、室内でも置いておける。
その結果はすごかった。生ゴミでも、特に処理やゴミ出しまでの保存の厄介な魚の内蔵などの分解が早く、翌日にはどこにあるかわからなくなっていた。しかも腐敗の進みやすい夏ほど分解が早い。野菜類はやや時間がかかるが、すぐ枯葉状態になるので、森林のような匂いしかしない。なぜもっと早くやらなかったのか、みんながしないか不思議なくらいだった。

だが、問題もあった。まず、使っているうちに徐々に効率が下がる。当初サラサラのピートモスしか入ってないように見えた箱の中も、次第にゴミの細粉が交じるようになり、それにつれてゴミの匂いがしはじめ、分解にも時間がかかるようになった。こういうときは、米ぬかや廃油を入れてやると凄まじい勢いで熱と蒸気を出して、生ゴミを分解してくれるが、それでもだんだん単なるゴミ溜めに近くなる。問題なく使えるのは期間にして2~3カ月くらいだろうか。庭のある家庭ならそのまま屋外に放置しても問題ない程度だが、寒い季節になると、一段と効率が下がる。

もうひとつの問題はダンボール箱自体だ。通気性や手に入りやすさではダンボールは理想的なのだが、コンポストの発酵は大量の水蒸気を出すので、そのうち箱がへたってくる。そして、3カ月~半年後には中身が劣化するか、箱がもたなくなるかで、再スタートしなければならなくなる。こうなると土とも生ゴミともつかない物体や、汚れてヨレヨレになったダンボールをどうにか処理しなければならなくなる。匂いもしてくるので、ベランダに退避させたが、雨風や日光でたちまち風化した。

こうしてダンボールコンポストは一回きりのチャレンジで終わったが、スタート当初の痛快なほどの生ゴミの消えっぷりは忘れられない。あともう少しの工夫で、家庭の生ゴミから都市のエコロジーまで、一気に解決できるのではないか。そう思った私は、アイデアを練ってみることにした。

次回「驚異のバイオトイレ」に続く

中国製サックス

知人がアルトサックスを買った。中国製の新品で、値段は3万円ほど。少しでもサックスを知ってる人なら、飛び上がって驚くか、フンと鼻で笑うところだが、どうやら悪くないようなのだ。サックスといえば、ヤマハ製で10万円から、ヤナギサワで50万円から。天下のセルマーなら、100万円以下のもある、という具合に高い上に、それ以外のメーカーはないも同然の楽器だ。バイオリンなどと違って、古くなっても価値が出ないので上限はあるものの、格好良さそうなので試しにというわけにはいかない。そこで中古品ということになるが、ネットで探すのは博打になってしまう。もし箸にも棒にもかからないシロモノが手元に残ったら、ただギャンブルでスッてしまうよりタチが悪いかもしれない。

ところが3万円の中国製は、なかなか良いらしいのだ。もちろんプロ用クオリティではないし、遊び用、興味本位用なのだが、今までそういう人向けのものはなかった。メーカーはプレイテックというところで、オモチャではないようだ。おそらく中国では、天下の名品を徹底的に分解、チェックし、コンピュータ制御の工作機械でどんどん作っているのだろう。そういう作り方は熟練工の手作りには敵わないものの、データやノウハウが蓄積され、共有化されるので、じわじわと品質が上がっていく。それがついに一定の水準を超えたのではないかと思われる。

私のバイオリンも中国製で、安いから買ったものだ。ちゃんと弾ける人には鼻も引っ掛けてもらえないとは思うが、毎日弾くのが楽しいかどうかと言えば、文句なく楽しい。だから自分にとって品質は十分である。まだ見ていないが、中国製アルトサックスも同じだと思う。
3万円でサックスが手に入るのは、大事件だ。多分、売れまくっていると思う。ただし高齢者は知らないかもしれない。が、高齢者の中には、若い頃にジャズや海外の音楽にあこがれつつも、手が出ないまま、仕事に追われて生きてきた人が多いはずだ。そういう人には、3万円でサックスが買える時代になったことを知ってほしいと思う。

ちなみに昔はなかったサックス用弱音器というものもあるようだ。中国製アルトなら、本体より高いことになってしまうが。

Blender考

無償の3DCGソフト「Blender」をいじり始めた。以前は、CGソフトはパース作成や特撮映画など、特殊な分野の人しか使わなかったが、動画や3Dプリンタ、ゲームなどの素材づくりができるようになったため、いろいろな人に有用な道具になった。

大げさに言えば、無料のCGソフトは世界を変えるかもしれないと思う。例えばその昔、始めてワープロが登場した頃は、ワープロが使えるかどうかは、その後の人生のあり方まで変えた。文書に関わる仕事の人はもちろんだが、メールやブログなど、個人生活の質まで変えてしまった。ワープロは文書に関する変革だったが、CGソフトは画像や物体の世界での一大変革だと言ってもいい。Blenderが使えるというだけで就職などに有利になることもあるだろう。

趣味の世界ならなおさらだ。プラモデルや帆船模型など、部材を削り出し、組み立てて色を塗り、組み立てるまでの作る楽しさを満喫したら、陳列しなければならなくなる。CGなら、作る楽しみを味わったあとはPCに保管できるし、ネットで公開もできる。さらに公開した建物や船のデータを使って、別な人がテレビゲームにするというような場もすでにある。現物に触れる醍醐味は減るかもしれないが、その何倍もの速度で作ることができ、動画やゲームなど、新たな世界が広がる。

3DCGソフトの操作は、なれるまで難しいかもしれないが、難しいのは項目がたくさんあるからで、能力や記憶力のせいではない。高齢者にも使える。個々の操作は単純なので根気よく取り組めば、いつかは大物も完成させられる。
仕事と趣味の中間的な使い方も考えられる。例えば構想だけあって実現しなかった建物や、試作品までいかなかった機械などを、バーチャルとはいえ完成まで持っていける。その過程で新たなアイデアが生まれるかもしれない。また、文化財とまではいかない昔の建物にも、その時代の工法や生活文化が詰まっている。そのまま保存しろというのは無理だが、今は無くなった自分の生家や学校、近所の郵便局や交番などを3DCGで再現すると面白い。CGデータが公開されれば、実際にその建物を使っていた人が修正して、さらに細部まで再現するなど、関わる人も増え、立派な文化事業になるのではないかと思う。こういうものこそ、現代を生きる年寄りの出番ではないだろうか。

試作品。人前に出すには技術レベルがいまいちで、お絵描きソフトも使ってインチキしてるが、今はここまで。