装飾の時代

我々の若い頃は、シンプル・イズ・ベストの時代だった。過剰な装飾は古臭く、田舎臭い。ギリギリまで装飾をなくしたデザインが都会的、近代的だとされた。そして家電、インテリア、ファッション、それらの広告もシンプルなデザインに置き換わっていった。今でもユニクロやアップル製品には、シンプル・イズ・ベストの伝統が受け継がれている。

シンプルデザイン指向は製造・販売側の都合でもあった。装飾を施せばその分コストがかかるだけでなく、消費者の好き嫌いが別れてしまう。大胆なデザインは大流行するかもしれないが、総スカンを食らうかもしれない。景気もかつての勢いが失われたなかで、大量生産で低価格な商品を大量販売するためには、製造コストや消費者の好き嫌いのリスクが少なさそうな、シンプルなデザインを出すしかなかった。

が、そういう時代だからなおのこと、良い装飾は良いものだと思う。動画は高級注文家具の職人のものだが、重厚なマホガニーに施された大ぶりの装飾は、大胆ながら落ち着いた風格があり、また伝統の味わいを持ちながら全体のモダンなシルエットに溶け込んでいて、多分長年使っても飽きがこないだろうと思う。多分買うのは無理だが、見るだけでも目の保養だ。

こんなふうに腕のある職人が、目のある客に直接アピールして販売できる現代は、実に良い時代だと思う。

意味のないピクトグラム

最近トイレの表示マークの男女を色分けしていない施設が出てきた。入りかけてから、一度出て見直したことも何回かある。場所が場所だけに、不審者である。内装の統一感のためなのか、それともジェンダーがどうしたこうしたのせいなのか、小さな事かもしれないが、超えてはいけないデザイン上の常識を超えてしまったと思う。

今更だが、トイレ表示のようなデザインをピクトグラムという。日本では前回の東京オリンピックの頃から、様々な場所で使われるようになった。ポイントは、文字が無くてもひと目で場所や機能をわかりやすく表示することである。制作時点で工夫が凝らされているだけでなく、長年同じ形のままで使い続けられているため、広く社会から認知されていることに意味がある。信号や非常口サインの色を気分で変えてはいけないのと同じだ。

トイレマークの色には、赤が女で青が男というよりももっと大事な、遠くから見ても赤と青が並んでるだけでトイレとわかる、という役割がある。長年我々はそういう風にトイレを探してきた。なので、場所を探すのに手間取り、さらに入り口で戸惑うようになったら、悲惨なことが起こることだってありうるのだ。差別主義者もジェンダーフリー派も、性差以前の人としての尊厳にかかわる事態に陥るのである。
だから、これからビルや施設を開発するオーナーやプロジェクト責任者は、おかしな風潮に惑わされること無く、女性用は赤、男性用は青のトイレ表示をつけてほしい。

「男性もスカートはく時代です」とかいうの、やめてよね!(Blender練習作品)

パーカーソーラープローブが5番目の金星フライバイを達成

NASAの太陽観測宇宙船、Parker Solar Proveは、10月16日、金星の重力を利用したフライバイに成功した。今回のフライバイで、宇宙船は時速9,720キロメートル減速。前回8月のの太陽への接近時よりも190万キロメートル近づいた軌道をめざす。

惑星重力を使ったフライバイは、宇宙計画でも特にダイナミックな出来事だ。たとえばテーブルの上に惑星に見立てて円柱型の磁石を置き、その周りを宇宙船に見立てたパチンコ玉を転がす。すると磁石に近づく角度や速度の違いで、吸い付いてしまったり、そのまま直進したりするが、程よい加減で転がすと、磁石に引っ張られて角度を変え、別の方向に向かって転がっていく。これを宇宙的規模で行うのがフライバイだ。

今回は金星の重力を利用して宇宙船の速度を落とした。低速で近づけば磁石にくっつきやすくなるのと同じで、今回はよりスリリングなフライバイだったと言える。2017年の発射のさらに前から、2024年の計画終了まで、計7回のフライバイを計算してきたのかと思うと、気が遠くなるようだ。

https://blogs.nasa.gov/parkersolarprobe/2021/10/19/parker-solar-probe-completes-its-fifth-venus-flyby/