コピ・ルアクを飲んでみた!

世の中には、最初に食べたのはどんな人だろうかと思うような、珍妙な食材がある。臭いもの、見かけがグロなもの、そもそも食品ではないものなど、多種多様だが、インドネシアの高級コーヒー「コピ・ルアク」はそのなかでもチャンピオン級だ。なんとジャコウネコと呼ばれる動物がコーヒーの実を食べて出した糞の中から、未消化の豆を取り出したものである。このたびその希少なウンコーヒーのおすそ分けにあずかったので、そのレポートである。


ジャコウネコ/画面クリックで、危険画像へ


コピ・ルアクは、その希少性からくる値段の高さのせいで、単なるゲテモノ食材以上のものとみなされている。ネットで調べたら、豆の価格でブルーマウンテンの10倍の、100g5000円程度。これはたまたま目についた価格で、ニセモノも多いそうだから、由来の確かなものがそれ以上の価格で取引されていたとしても不思議ではない。とあるカフェでは1杯3000円で出してるそうだが、常時在庫してロスの出るリスクも考えれば、むしろ安いくらいだ。

せっかく希少なコーヒーが手に入ったので、実食の前にいろいろ調べてみると、コピ・ルアクを作り出すジャコウネコは、名前にネコがついているが、ネコとは別種の動物である。肛門の側に臭腺と呼ばれる器官があり、ここから出る分泌物が香水の原料となる。香りがポイントのようなので、普段使ってるコーヒーミルを分解掃除し、洗えるものは洗剤を使わず洗ってしばらく水にさらし、洗えない機械部は湿らせた綿棒でこすって、古いコーヒーのカスや油を徹底的に取り除いた。そこまでやったのも、挽いたものを知人のソムリエのところへ持っていくことになっていたからだ。なにしろ、毎日グラスに鼻を突っ込んでは「セイヨウワライタケの香りがする」とかなんとか言ってる人たちである。「古くなったコーヒー豆の匂いが、ムスクのような華やかな香りを台無しにしてる」とか思われては申し訳ないので。

さて肝心の豆は、やや大きさにばらつきのあるコロンビア・スプレモという感じで、どれもしっかり成熟している。ジャコウネコがよく熟した実だけを選んで食べるからだと言われれば、そう思える。ただし、浅煎りだったせいもあってやたらと豆が硬い。大豆かと思うほどで、5回ほどミルを通してもハンマーで割ったようなかけらがかなり残った。

ドリップでは最初のお湯をしっかり浸透させたあと、点滴のように湯を注いだ。いつもならざぶざぶお湯を入れて、落とし切る前に引き上げていたが、お湯が早く流れすぎる感じがしたので、今回は落としきってみた。色は薄めだが、これは焙煎のせいである。肝心の味は、やや酸味があるかなという他はクセの少ない、深入り愛好派には少々面白みのない味である。また、コーヒー自体からはそれほどではないが、ドリップカスからは中華調味料の豆鼓に似た香りがする。豆鼓のように発酵しているのかもしれない。

ちなみに高額な食品には大抵「アレがアレになる」という効能がついてまわるのだが、残念ながら検証するには歳をとりすぎたようだ。ただし、ウンはついたかもしれない。

驚異のバイオトイレ

ダンボールコンポストから続く)
ダンボールコンポストを試してみて、いくつかの欠点を改良できないか考えていたとき、旭川の正和電工が発明した「バイオトイレ」を取材することになった。富士山に設置されていることでも有名で、しくみはオガクズに電熱をかけて撹拌するだけ。水で流すこともなく、細菌などは一切いらない。自然に分解されるような温度と撹拌機の回転数がポイントだそうで、最後は堆肥化したオガクズを回収することで、大幅なし尿の減量化ができる。富士山のほか、各地の自然公園などで採用された理由だ。 橘井社長 がめざしたのは水環境の保全で、水洗トイレから発生する大量の汚水を削減とかできないかと考えた末の発明である。し尿の処理ではなく、汚水の削減をのために乾燥状態での処理を考えた点がユニークなアイデアにつながった。
(以下徐々に「デリケートな」話題になるので、敏感な方は引き返したほうがいいかもしれない。今も、この話題は予告しなければよかったかどうか迷っている)

正和電工はもともと電気製品の卸売業で、敷地内のあちこちに仮設トイレ型やログハウス型などのバイオトイレが並んでいる。発明者の橘井社長自ら案内してくれたのは社員の使うバイオトイレ。便器を覗き込むと、下にオガクズがゆっくり回っているところが見える。その中へ直接落としているのだが、匂いは全くしない。
続いて橘井社長は汲取口側へまわって蓋をあけ、なんとオガクズを手ですくってみせた。この通り匂いもなくなるというアピールなのだが、取材者として近寄って匂いを嗅がなければならないかもと思って、かなり動揺した。幸いそこまでしなくても良かったが、どうも、お約束のパフォーマンスだったらしい。

電熱をかけなければならないのかと質問したら、そうやってまで処理したい場所を想定したものということだった。その一例が富士山ということだろう。熱をかけないものとしては、介護用バイオトイレもある。マッサージチェアくらいの大きさで、蓋を下ろすと椅子にしかみえない。要介護者の自室に持ち込んで使う。処理量が少ないので、そのサイズにできたという。もちろん携帯便器のように匂いなどはなく、汚物を堆肥状のオガクズとして取り出せばいい。

というような経験をして、コンポストも安定した熱源があったほうがよいと気がついた。そこで考えたのがベランダ・コンポストである。
(「ベランダ・コンポストとニューヨーク・グリーンマーケット」に続く)