
この看板が話題になったのは何年前だっただろうか。ざっと訳すとこんな内容だ。
もしあなたが小さな店で買うなら、それはC.E.O.の三番目の別荘ではなく、
少女のダンスレッスンや、少年のチーム・ジャージや、両親が食卓に食事を出す助けになる - 地元で買おう
良いことを言ってるが、日本の小売店ではここまで言えないだろう。経営の苦しさを客のせいにしているようで、敬遠されかねない。
また、アメリカは日本と事情が違い、さまざまな業種で大企業の占める比率が高い。国民の多くがサラリーマンであり、自営業、小規模経営店が極端に少ないのだ。そのうえ、メーカー自体も大企業が多いので、小規模店でも大規模店と同じ商品の比率が高い。アメリカのShopLocalは、少数民族が保護を訴えているようなものかもしれない。

しかし、アメリカに比べれば、まだまだ熱心な小規模小売店が多く残っている日本では、地域のお店での買い物は消費者の利益になる。
地域のお店には、商品のプロがいる。大型店にももちろんいるが、売り場に常時いて接客してくれるわけではないし、数も少ない。それに比べ小規模小売店では、店主とおかみさん、その子供たちなど、接客してくれる全員がプロということも珍しくない。
「そのナスは風にあたったから、皮が固いよ。こっちを買いな」
我々高齢者は子供時代から地域の店にお使いに行かされ、そんな知識を聞きながら育ってきた。年寄りはそうやって培った目利きを活かし、今、スーパーで安くて良いものを選んで買っている。年寄りはズルいとも言えるが、目利きのできていない若い人は、地域の店でプロと接することで、ネットやメディアに頼らず自分の目で商品を選べるようになるだろう。
小規模なお店は、地域社会の入り口でもある。若い人が入学や就職、結婚など、新しい環境に引っ越した場合、まずは地域の小さなお店に通うべきだ。そこはおそらくマーケティング・データではなく、客の顔を思い浮かべながら仕入れを決めているはずだ。だから、顔なじみになるにつれて、徐々に自分にあった商品がふえていくのを感じるだろう。そして、挨拶をして回らなくても、噂話で新しい住人である自分のことを地域に紹介して回ってくれる。自分の登場で、お店や地域が少しずつ変わっていくという感覚は、大型店では決して味わえないものだ。