きらきら星

バイオリン初心者の練習曲といえば、「きらきら星」と相場が決まってるらしい。いかにも童謡っぽくて、いい年をした大人が魂を傾けて弾くものではないような気がする。こういう選曲では、その後の上達にも影響があるのではないかと思うのだが。
だが、原曲は19世紀のフランスのシャンソンらしいが、オリジナルの歌詞はこんなぐあいだ。擦れっ枯らした大人から見ても、なかなか趣深い。とは言え弾く気にはならないが。

ねえ! 言わせてお母さん 何で私が悩んでいるのかを
優しい目をしたシルヴァンドル そんな彼と出会ってから
私の心はいつもこう言うの

「みんな好きな人なしに生きられるのかな?」

あの日、木立の中で 彼は花束を作ってくれた
花束で私の仕事の杖を飾ってくれた こんなこと言ったの「きれいな金髪だね
君はどんな花よりきれいだよ 僕はどんな恋人より優しいよ」

私は真っ赤になった、悔しいけど ため息ひとつで私の気持ちはばれちゃった
抜け目のないつれなさが 私の弱みに付け込んだの
ああ! お母さん、私踏み外しちゃった
彼の腕に飛び込んじゃった

それまで私の支えは 仕事の杖と犬だけだったのに
恋が私をだめにしようと 犬も杖もどこかにやった
ねえ! 恋が心をくすぐると こんなに甘い気持ちがするんだね!

ドイツ戦勝利とJリーグ100年構想

今を去る約四半世紀前にJリーグがスタートした際、Jリーグ100年構想が発表された。地域社会がスポーツ文化を支えながら、世界に通用するレベルに育て上げるというものだ。そして「世界」とはワールドカップのことであり、「通用する」とは、ブラジルやドイツなどと渡り合えるということである。実に心躍るメッセージであったと同時に、「やはり100年もかかるのか」という思いもあった。世界に通用するプレイヤーやチームどころか、芝のサッカーコートすらほとんどない日本が、ドイツやブラジルと張り合えるようになるには、100年でも無理かもしれない。自分はその日に立ち会えないのだろうと思ったものだ。

それがどうだろう。ドイツはまぐれや奇跡が起こったくらいで勝てる相手ではない。あの瞬間だけのことかもしれないが、まぎれもない実力である。そして、スタジアムに行ったことのある人なら、地域のご贔屓チームのサポーター席からドイツ戦のフィールドまで、目に見えない道が繋がったことを実感しているはずだ。それがサッカー、それが文化である。

文化面のほかにワールドカップの重要な点は、ずばり金だ。高度に発展した世界経済は、パンデミックや戦争など想定外の出来事が起こるとすぐダメージを受ける。金持ちが苦しむだけなら放っておいても良いくらいだが、御存知の通り、我々の仕事や生活が直接被害を被る。おそらく困窮者、小企業、途上国など、弱者であるほど大きな被害を被っていることだろう。

サッカーは、世界中で莫大な経済効果を生み、しかも金持ちが強いわけではない。FIFAランキングを見れば、世界一位は新興国のブラジル。以下、ベルギー、アルゼンチンと続き、世界最大の経済国アメリカがようやく16位。日本は24位で、中国は79位だ。今回開催国のカタールも一人当たり名目GDPなら世界8位の(日本は27位...)世界有数の金持ち国である。いわば金持ち国やそこのスポンサー企業が、新興国のチームや選手が活躍する舞台を提供しているのがワールドカップである。仮に運営面に多少怪しい動きがあったとしても、こんな風に概ねフェアで生産的で、しかも痛快な事業はなかなかない。試合を楽しみ、素直に喜べる立場にいて、本当に幸せだと思う。

パンよりビールのほうが早く誕生したらしいという話。

古代メソポタミアの遺跡から、人類最古のビール醸造所が発見された。これはエジプトで発見された世界最古のパン工房よりも古いため、人類は食用の麦の余剰で酒を作ったのではなく、はじめに酒造りをし、その後食用にするようになった可能性が出てきた。

これは納得のいく話だ。小麦の耕作を始める前でも、狩猟であれなんであれ人間はちゃんと何かを食べて生きていた。今日、明日の食料が不安な状態で畑作に取りかかるとは思えない。また、将来の食糧危機を危惧して、収穫まで時間のかかる農業を始めたというのも、理性的すぎてウソくさい。むしろそれまでも果実などから作っていた酒を、小麦から大量に作る方法が発見され、飲みたい一心で大勢が協力して畑作を始めることになったというほうが人間らしいような気がする。