見習おうかな、ドイツのデジタル主権

ドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州政府が、PCのOSをLINUXに、OfficeをLibre Officeに切り替え、それぞれオープンソース化することを決めたらしい。これは興味深い試みだと思う。中立性や自主性という意味で、自治体のIT環境のオープンソース化は良いことだと思う。
自分はPCやインターネットが誕生したときから使っているので、当時の個人や中小企業がゼロから知識や技術を身につけていったのを見ている。好奇心の強い人や若い人、なんとなく総務部長、じゃんけんで負けた人などさまざまな人が担当者にさせられ、理系も文系もなくすべての人が門外漢な状態からスタートした。また少しでも先に慣れた人は、学生でもなんでも事務所に呼ばれ、設定やレクチャーをした。ペイフォワードの精神が生きていて、なかなか良い時代だった。昔話になってしまったが、あのとき手探りでIT化に取り組んだ個人や企業は、その後の急速な情報化に免疫のようなものがついたように思う。
現在は、ITに関する情報やサービスがあふれ、誰でも瞬時に新しいサービスを開始できる。一方オープンソースを導入すると費用はかからないが、時間と労力がかかることになるだろう。が、それらは本来必要な時間・労力なような気がする。その昔中東の産油国がアメリカから最新の戦闘機を購入した際、教官が派遣されて現地のパイロットの訓練が始まったが、来る日も来る日も滑走路でランニングばかりなのでクレームが来た。自分たちはそれなりに経験のあるパイロットなのに、素人扱いしているというわけだ。が、仮にそれまでの戦闘機がマッハ1だとすると、マッハ3で飛ぶには3倍とは言わないまでも、パイロットには今まで以上の体力が求められるだろう。プロのためのシステムは家電と違い、最新のものがそれだけ使いやすくなるわけではない。

私自身はwindows環境だが、しばらく前から事務系はLibre Officeに切り替えている。操作には問題がないので、あとは外部から受取りファイルの互換性だけ確認中で、LINUXへの切り替えも前向きに考えている。ちなみにドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州というのは、16ある自治州の最北端にあり、面積も小さい。牛のホルスタインの由来になった地域らしい。技術先進国の中のローカル地域の判断ということで、親近感が持てるし参考になる。

ライフワークと高齢クリエイター

仕事であれ趣味であれ、歳を取ると現在やってることはすべてがライフワーク。自然と人生をかけた取り組みになってしまう。定年のない仕事をしている人には当たり前のことだが。
ネット上の創作系サイトで、高齢クリエイターがけっこう活躍しているのではないかと思うことがある。それを一番感じるのは小説投稿サイトだ。この手のサイトはインターネット普及直後からあった。画期的な試みだと思ったが、さすが当初は当時は原稿のレベルが低く、さらに言えば安っぽいポルノが多かった。
が、いつの間か膨大なライトノベルの発信源になり、出版やマンガ、アニメといった日本のコンテンツビジネスの一翼を担うほどになっていた。そのレベルはピンキリだが、作者の言葉遣いや歴史的エピソードの引用などを見ると、決して10代、20代ではないと思えるものも多い。しかもかなりのハイペース連載なうえ、いろいろな業種で就業経験がそれなりにあるようにも見える。先日は「人間機関車ザトペック」などという、私でもうろ覚えの古いネタがあった。検索すれば若い人でもわかるかもしれないが、こういう小ネタは同時代性のない人にはなかなか出てこないような気がする。
もしかしたら、創作投稿の世界ではなかなかの高齢者が活躍しているのかも知れない。CGにも同様のクリエイターがいる。若い頃にはとても手が出なかったソフトが簡単に手に入るようになり、ネット上で作品や使い方講座などを公開している。小説についても、昔にも志望者は大勢いただろうが、現実的に地方在住者にはデビューチャンスがないも同然だった。が、創造的な衝動というのは業のようなものなので、夢破れてそれっきりな人だけではなく、なんとなくプロットを書き溜めて来たという人もいただろう。それが例えば定年などで時間ができ、さらに投稿サイトという場所を得た。想像に過ぎないが、あり得ることだと思う。

タイトル画像の話 / 人間劇場

雄大な自然や歴史的遺跡、最新の機械や建築物など、世の中には興味深いものが限りなくあるが、人間の面白さはまた格別だ。とりわけ高齢者は、何も言わずにその場にいるだけで、その人なりの考え方やそれまでの生き方がにじみ出てくる。

今回の絵はわざわざ3DCGを使わずとも、Photoshopなどでも十分できた作品ではある。むしろそのほうができが良かったかも知れない。四角い画像の背景を透明にして、人物だけを切り抜くという、ちょっと苦手だった作業の練習だった。とりわけ「ノード」という作業環境に慣れておきたかった。

高度なソフトウェアは、機能が豊富な分だけ画面がメニューだらけで、しかもそれぞれのメニュー項目のさらに深い部分にも、無数のメニューが隠れていたりする。そこで無数にある項目の中から関連する部分だけカードに書き出し、配置を替えたり結びつけたりして、作業工程全体を画像的に把握できるようにしたのがノードだ。

ノードはCGだけでなくさまざまなシステムに採用されているインターフェース技術なので、現代のビジネスマンには常識化してるのかも知れないが、新しい概念なので、年寄にはなかなか理解しづらい。使いこなせれば便利だというのだが、ジェット機の操縦席を見せられて、「使いこなせればニューヨークまでひとっ飛びだから便利」と言われるような気分である。

画面の下部が「ノード」で作業中の様子。右の人物の画の元絵、表面の光沢などの設定データをまとめたカードを並べ、線をつなぐだけで設定が加わったり変更したりできる。別な対象物に同じ条件をあてはめるのも簡単だ。が、説明できたからと言って、うまく使えてるわけではない。

この手法が気に入ったので、人間劇場第二幕も公開。タイトルには使わない予定。(画像クリックで拡大)