「お祖父ちゃん、お薬飲んでね」キャンペーン

通院していながら、医者から出された薬を飲まない高齢者がいる。彼らは同世代にたしなめられるとムキになるので、決して忠告などしない。が、医学に関わることについて、我が身を実験台にして医学博士の判断と張り合おうというのだから、あきれはする。その上困ったことに、黙って飲まないだけならまだしも、必ず周囲にそのことを吹聴する。感化されて飲まなくなる人が出てきたらどう責任を取るつもりなのか。こういう人物も、かつては判断力や洞察力を持ち合わせていたのかも知れないが、歳を取るというのは、そういうことなのだろう。

医者には病気を直すことなどできないと思う。が、健康な人を病気にさせないことや、患者を今以上に重篤化させないことはできる。それが、医者のアドバイスである。「タバコをやめましょう」とか「体重を落としましょう」などのありふれたアドバイスであっても、それで重症化が防げることがわかって言ってるのである。逆に言うとそれを無視した場合に◯年後、さらにその◯年後にどういうふうに重篤化していくのか、医者の頭の中にははっきりしたイメージが見えている。それを口にはしないが。「この薬を飲んでください」というのも同様だ。アドバイスだけ、またはありふれた薬を出すだけで済んでいるなら、なんとしてもそれを守って、将来の重篤化を防がなければならない。
私は、世の中に名医などというものはおらず、ただ名患者がいるだけだなのだと思っている。なんとか大学先端医療チームなどにかかるようになったら、片足突っ込んでいるようなものだ。好き勝手している患者を直せる医者などいないが、その指示に忠実に従う名患者になら、誰でもなれる。

さて、薬を飲まない年寄りには何を言っても無駄だが、孫にたしなめてもらうのなら別かもしれない。そこで薬嫌いの祖父母のいる若い人、子供の口から、「長生きしてほしいから、病院の薬を飲んで」と言ってほしいと思う。大事なお祖父ちゃんを、愚かで短命な爺いにしない鍵は、君たちが握っているのだ。

薬をわざわざ吐き出す年寄までいる、ということか。さすがは「いらすとや」、よく観察しているものだ。