カリブの海賊

「海賊船ハンター/カリブ海に沈む伝説を探せ」を読んだ。現代のトレジャーハンターが、17世紀のカリブ海に沈んだ海賊船を発見するまでのノンフィクションで、個性的な主人公たちが謎を解きつつ困難に立ち向かう姿も読みごたえがあったが、そこで語られた海賊の実像に驚かされた。

17世紀、アメリカ独立以前のカリブ海では、イギリス、スペイン、フランスなどが新大陸での利益を巡って絶えず争っていた。戦ったのは海軍の軍艦だけでなく、国から「私掠船」という、敵国の船を略奪する許可を与えられた、いわば公認の海賊もいた。当時の商船と海賊船は、どちらもガレオン船といういかにも帆船らしい船で、大砲を備えていた。私掠船免状ひとつで商船が海賊行為を行えたのもそのせいだが、中にはそのまま本物の海賊になってしまったものもいた。ちなみに当時の日本の出島にあった「オランダ東インド会社」は、経営が悪化するとポルトガル船に対して私掠行為を行っていたらしい。

「海賊船ハンター/・・・・」の海賊船、「ゴールデン・フリース号」の船長ジョセフ・バニスターは、私掠船船長ではなく海賊中最強最悪と呼ばれる人物だ。もともとはイギリスとカリブ海を航行する商船の船長として非常に高い評価を得ていたが、突如、指揮していたゴールデン・フリース号を奪い、そのまま海賊となった。一度はイギリス海軍に逮捕されたが、ふたたび同船を奪って決死の脱出行で逃走。海賊を続けた。
バニスターはその残虐ぶりでも有名で、捉えた船の乗員乗客に対し、「生きたままどうしたこうした…」というような、とてもネットには書けないような行為を繰り返した。その一方で獲物はすべて山分けで、配分も船長が2倍とるほかは手下全員が同じ額。また必要経費は船持ちで、作戦や活動方針なども下っ端まで含めた全員の決議で決めていたという。当時は海軍や一般の商船でも、下っ端は奴隷同然の虐待を受けていたというから、バニスターは、時代を何百年も先取りしたような民主的な人物でもあったらしい。現代では到底ありえないが、自由でスケールの大きな男たちが、大胆不敵な冒険を繰り広げていた時代だったようだ。

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