イスタンブールにある歴史的パン屋

というタイトルの動画だが、ぜひ日本語字幕を有効にして見てほしい。

仕事というのは矛盾に満ちている。成功や失敗、出世や脱落などの成果だけではなく、日々の労働が思い通りにならないことの連続だが、いちばん誇らしく感じる瞬間もまた仕事にかかわることだ。

動画はトルコのイスタンブールで、伝統的なパンを作るお店の取材動画。大統領も食べているという老舗だ。木を燃やして大きなオーブンの空間で焼くという、昔ながらの製法は今ではすっかり少なくなり、この店も政府の許可を得て続けている。以前はサワードゥ(天然酵母)を使っていたが、今はイーストを使う。サワードゥのパンは100m前からでも香りでわかるほど味が違うが、製造に時間や手間がかかるため、裕福な人のためのものになってしまう。

従業員は、「オーブンから生まれた」と豪語する大ベテランから、アフガニスタンから来た若者まで、休みは一切ない。故郷には戦争はあるが仕事がないという若者も、農業などの昔ながらの産業が成り立たなくなり、行きたかった学校に行かずここに来たという大ベテランも、社会の変化や世界情勢に追いやられるようにイスタンブールにたどり着いて、今のトルコ人がやりたがらない過酷な仕事を続ける。

楽しみはと尋ねると即座に「ない」と答える。が、「自分たちはブレない」とも言う。昔の日本も職人仕事はこんなものだったが、世界を見ればまだまだこういう場所がある。日本にあふれる「伝統の製法」や「こだわりの品質」が、ちょっと空々しく思えてくる。

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