李子柒 / 薔薇

今回の李子柒は薔薇。読めるけれど書けない漢字の代表選手だ。中国語では「玫瑰花」らしい。こうなると読むこともできないが。

私は花が嫌いだ。寺に育ったので、特にお盆の頃は供えられた花が腐り、数日で花立ての中がとんでもない匂いのドロドロ物質で充満する。それを片付けるのは私の役目だった。「こんな腐ったものを供えて、祖先が喜ぶと思ってるのかな。それどころか、呪ってる人間がここにいるのだが」などと考えていたのは秘密である。

日頃も花とは無縁なので、薔薇と聞いてもやや興味が薄かったが、そこはこのシリーズらしく、ほぼ食品に加工していた。それもお菓子から肉料理まで、バリエーションが豊富なので、中国の薔薇栽培はそれほど歴史があるのか調べると、唐の時代、西暦800年代の漢詩に、薔薇の庭を歌ったものがあった。日本での栽培は主に明治以降なので、1000年くらい歴史が古い。中近東やギリシャでも紀元前から栽培されていたらしいので、日本以外では非常に古くから愛好されてきたものということになる。

薔薇水を作るために、家庭用サイズの蒸留器を使っていた。日本では禁止されているので、なかなか見る機会のない装置だ。また、もち米と麹で酒を作っていたが、上澄みを飲んでその分水を足し、また発酵を続けさせていた。これまた日本では禁止されているので使いみちはないが、実用的な酒造りのやり方だと感心した。

李子柒 / オクラ

今回の李子柒はオクラ。

オクラ栽培のはずなのだが、竹垣づくりや土木作業が続く。コマ落としで、ちゃんと自分でやってるところを見せるのだから大変だ。ヤラセだろうというコメントでもあったのだろう。律儀なことである。

実にいろいろな作物を自宅の畑で作っている。北海道の農家だと規模は大きいが販売用以外は作っていない事が多く、道東に出店したスーパーが予想以上に野菜が売れることに驚いていた。そうやって種類も量も盛り沢山なメニューが並ぶ。日本人は少食だが、中国人は大食漢なのであんなものかもかもしれないが、量はともかく栄養バランスがぜんぜんかなわない。あれが本当におばあさんと二人分のメニューなのか、撮影用のやらせなのか考えてしまう。そのうち1カットコマ落としで食べきるところをやってもらえないだろうか。

李子柒 / キュウリ

今回の李子柒はキュウリ。最近は更新が多い。

黄瓜は中国式で日本では胡瓜と書くのだと思っていたが、両国ともどちらも使うらしい。我々のよく知るキュウリは未熟な緑色のものだが、中国では黄色く大きく熟してからも、漬物で食べるようだ。漬物に使った独特の瓶は「泡菜壇(ポーツァイタン)」と言うらしい。
かぶせた蓋の周囲に水を張るので、発酵で出たガスは外に出るが外気や雑菌は入らない。うまくできている。昔は中国物産展で小型の泡菜壇に入った漬物を売っていた。意味ありげだがそういう装飾かと思っていたが、この動画シリーズで初めて使い方を知った。今は中国製の漬物も普通のガラス瓶詰めのようだ。

今では信じられないかもしれないが、日中国交回復直後は中国物産展が花盛りで、中国製食品といえば、素朴な無添加手作りで、日本製よりむしろ良心的というイメージさえあった。それが毒入り餃子事件で評価が一変してしまった。あれも日本人が憎いというより、エライさん同士の派閥抗争の中で、対立相手が日本企業と協力して進めていた事業にダメージを与えるために起こしたものらしい。醜い権力抗争はどの国にもあるだろうが、日本なら、たかがそんなもののために食べものを粗末に扱うなどもってのほかだが、中国では権力争いこそが天下の一大事で、たかが食べ物のことなど取るに足りない、という考え方の違いがあるようだ。が、愚かなことをしたものだと思う。

小麦粉を水で溶いて薄く焼き、おかずを包んで食べるのは世界中にある食べ方で、中国は餅(ピン)、メキシコではトルティーヤ、インドのパラタと名前は変われど同じものだ。