最近映画館に行くと、邦画が多いのに気がつくが、その多くはライトノベルや漫画、アニメの実写化作品だ。ストーリーやキャラクターはもちろん、背景や音響までマンガ家やアニメスタジオが作り上げたものに、人気アイドルをキャスティングするだけだから、リスクも少なく作り放題なのだろう。そんなファンを馬鹿にしたようなやり方が日本の映画界にとって良いわけもなく、私は努めて見ないようにしている。多少評価の高いものがあっても見ない。彼らの頭を冷やすには興行成績以外にないので、中途半端に好調だと間違ったメッセージを伝えてしまうかもしれないからだ。
そんな中、しばらく前から映画ファンの間で「オバQはすごいらしい」という声が上がっていた。まさかのオバQ、それも実写化である。マンガの実写化もネタがつきたかと思うような企画だ。間違っても行かない、小さな子どもにこそ安直すぎて見せたくない。そんな気持ちだったが、半ばイヤイヤ知人のお付き合いで行った試写会で心をうばわれた。
もちろんオバQはCGだ。だが、ごまかし技術としてではなく新しいキャラクター創造のための技術として生かされていて、「ああ、マンガってこうだよね」という存在感に満ちている。トイ・ストーリー等のピクサー/ディズニー作品のキャラクターにも劣らない存在感だが、あの昭和の懐かしい空気を再現した実写部分との融合具合は、彼らを超えたと言ってもいいだろう。
そして、ここに書くわけにはいかないが、我々はその驚くべきストーリーの中で、少年時代に失ってしまった「正義」や「勇気」と再会する。久しぶりの、エンドロールまで誰も立ち上がらない映画。男にも涙をぬぐう時間が必要なのだ。
今日はエイプリルフールです。