きらきら星

バイオリン初心者の練習曲といえば、「きらきら星」と相場が決まってるらしい。いかにも童謡っぽくて、いい年をした大人が魂を傾けて弾くものではないような気がする。こういう選曲では、その後の上達にも影響があるのではないかと思うのだが。
だが、原曲は19世紀のフランスのシャンソンらしいが、オリジナルの歌詞はこんなぐあいだ。擦れっ枯らした大人から見ても、なかなか趣深い。とは言え弾く気にはならないが。

ねえ! 言わせてお母さん 何で私が悩んでいるのかを
優しい目をしたシルヴァンドル そんな彼と出会ってから
私の心はいつもこう言うの

「みんな好きな人なしに生きられるのかな?」

あの日、木立の中で 彼は花束を作ってくれた
花束で私の仕事の杖を飾ってくれた こんなこと言ったの「きれいな金髪だね
君はどんな花よりきれいだよ 僕はどんな恋人より優しいよ」

私は真っ赤になった、悔しいけど ため息ひとつで私の気持ちはばれちゃった
抜け目のないつれなさが 私の弱みに付け込んだの
ああ! お母さん、私踏み外しちゃった
彼の腕に飛び込んじゃった

それまで私の支えは 仕事の杖と犬だけだったのに
恋が私をだめにしようと 犬も杖もどこかにやった
ねえ! 恋が心をくすぐると こんなに甘い気持ちがするんだね!

ダブルストップ

バイオリンの奏法のひとつで、多分カントリーなどのポピュラーで使われているテクニック。2本の弦を同時に弾いて和音を出すテクニックである。2本だからダブルだが、なぜストップなのかはわからない。
バイオリンは音量の小さな楽器だ。演奏者は顎で本体を挟んでいるため骨伝導で大きく聞こえるが、高音の弦だと蚊の泣くような音しか出てないことがある。我が愛機のような安物だとなおさらだ。曲の盛り上がる部分でも他の楽器ほどの十分な音量が出ないが、ダブルストップで弾くとなかなか迫力が出てくる。テネシーワルツなど、カントリーの曲ならぜひ使いたい技術だが、バイオリンを始めた当初、普通に弾いても隣の弦まで鳴らしてしまうくらいだから、ダブルストップは案外簡単なんじゃないかと思っていた。が、これは大間違いで、1本の弦だけなら多少当たる角度が違ってもちゃんと音は出るが、2本の場合は両方の弦に均等に乗るよう、弓を厳密な角度に保たなければならない。聞かせどころを作りたいなら、それなりに努力しなければだめだということで、鋭意練習中である。

これはイギリス人のフィドル(バイオリン)奏者、Chris Haigh氏による、テネシーワルツの指導動画である。英語の解説部分が長いので観賞用には向いてないかもしれないが、バイオリンの音を強調してあり、また、和音の選び方が格好いいので非常にためになる。私は最近まで知らなかったが、サイトでは、カントリーを中心にジャズ、ポピュラーなどかなり多くの指導動画をアップしていてためになる。

楽器の効用

楽器演奏は体に良いわけではない。管楽器は大抵歯に負担がかかるし、弦楽器は指の形が変わったりするものもある。バイオリンの場合は正しい姿勢を取り続けると、腰に無理がかかる。武道などでは、正しい姿勢とは体に無理のない姿勢であり、正しい動きは健康を助長することさえあるが、楽器演奏は良い音、良い演奏のためならどんな負担のかかることでもする、というのが正しい姿勢のようだ。
体への負担もさることながら、情けないことに楽器演奏で一番しんどいのは、集中や緊張など頭に関する部分だ。ダラダラと間違えながら弾いてるときはそれほどでもないのだが、調子良くノーミスでメロディを先回りしておかずを入れたりしてるときでも、ほんの数分の曲でも終わったときにがくっと疲れることがある。

一方、楽器を弾くと自分のコンディションがよくわかる。指使いが思い出せなかったり、ついていけなくなったりすると、自分でも気がつかないが頭が回ってないのだとわかる。こういうときはあまりいい気分ではないが、何度かやってるうちに調子を取り戻すことも多く、まだまだ自分はいけるんじゃないかと、かえって気分が良くなる。こういうのは朝のほうが多く、寝ぼけていても徐々に気分が高揚し、その日一日仕事も快調にできそうな気がしてくる。午後は長時間弾いても調子が悪くなっていくことが多い。やはり疲れているのだろう。

だから毎日朝に一曲弾いてから1日を始めれば、毎日エネルギッシュに暮らせるのではないかと思う。なかなかそういう時間は作れないが。