今回の李子柒はトウモロコシ。 玉”蜀”黍と書くくらいだから、動画の舞台の四川省と関係があるのかもしれない。我々道民はトウキビと言ってるが、それは高品質な北海道産だけに許された名称なので、これはトウモロコシというべきだろう。生食用ではないらしく、皮が枯れてから収穫し、さらに天日で干す。こちらでは見渡す限りのトウキビ畑も珍しくはないが、こんなふうに吊るして干す光景を見たことがなかった。なぜだろう。
今回の動画ではトウモロコシは粉に挽いてから調理していた。そういえば日本にはトウモロコシ粉のメニューが少ないような気がする。すぐに思い出せるのはコーンフレークくらいだろうか、それもアメリカ出身だが。
収穫後の茎も残らず刈り取って立て掛けて干す。小さな畑とはいえ、重労働だが、食べられない部分も家畜に与えたり再利用するシーンをちゃんと出すのがこの動画の醍醐味だと思う。
ところで冒頭の種まきシーンで、天秤棒に桶を下げてきたときは、一瞬下肥かと思った。洒落ていながらけっこう生々しい内容も出すシリーズなので、スタイリッシュに下肥をまくのではと身構えてしまったが、水でよかった。
李子柒
李子柒/黄桃
最近の李子柒は週一ペースで更新されるので、忙しい。さらっと流したシーンが、中国の故事にちなんでいたりするので、じっくり調べて紹介したいのだが。
さて、中国人にとって、桃源郷という言葉があるくらい、桃は特別な果物だ。西遊記では、天界最高位の女仙人、西王母の誕生日に、不老長寿の効用がある桃を振る舞う「蟠桃会」(ばんとうえ)が開かれるが、それに招かれなかった孫悟空(出家前なので、当時は弼馬温)が、 怒って桃林に入り込み、すべて食べてしまうという場面がある。普通の桃でさえ柔らかくて香り高く、甘いのだから、天界の蟠桃ならどれほどおいしいかと想像しながら読んだものだ。
ところが、中国には蟠桃という名の桃が実在するが、これはさほど美味しいものではないらしい。今回の動画に登場する黄桃も、大きさは立派だが、ちょっと硬そうに見える。結局煮たり、干したり、炒め物にしたり、発酵までさせていたが、そのまま食べるシーンがなかった。日本の桃のような味ではないのかもしれない。
李子柒について
人気のVブロガー李子柒の生い立ちや動画について紹介したサイトがあったので、機械翻訳+意訳ではあるが、 掲載したい。
李子柒は、中国四川省綿陽市平武県の山村で生まれました。彼女の両親が離婚し、父親が早く亡くなったために、祖父母と貧しいながら安定した生活を送りました。祖父は料理人で、地域の結婚式や葬儀などの料理を請け負っていました。彼女が動画で紹介している料理は祖父から学び、また竹かごの作り方、釣り、野菜の作り方、大工仕事などもすべて祖父母から学んだものです。
14歳の時、同世代の子供の大部分が中学に通う中、李子柒は中学を中退して自立しなければならなくなりました。彼女は生き延びるために、ウェイトレス、電気技師、漢服の販売員など、ナイトクラブのDJなどの仕事を転々とし、ときには空腹を抱えて橋の下で眠るような苦労も経験しました。そうした生活を7~8年続けて、いざというときに十分な貯金がなければならないことを悟りました。
2012年に祖母が深刻な病気を患ったのを機に、彼女はそれまでの仕事をやめ、故郷に帰って祖母の面倒を見ることにしました。朝早くから夜遅くまで農場で働き、普通の田舎の生活を送りながら、李子柒は中国のオンラインショップ「淘宝網」で商品を販売。2015年からはショートビデオのプラットフォームであるMeipaiに、短い作品をう投稿し、淘宝網の自分のショップへの動員を図りました。
彼女のビデオは当初注目されませんでした。そして、兄がMeipaiで、音楽や歌でファンを獲得していたのを見て、歌も音楽もできない自分に何ができるかを徹底的に考え、そして、人々に調理方法を教えることを考え付きました。裏庭や農地でとれる食材を使い、都市で育った子供たちに、野菜がどこから来て、どのように美味しい伝統的な中華料理になるのかを伝えようと考えました。
2017年、李子柒のショートビデオは、優秀な投稿者を探していた中国最大のSNS、Weibo(微博)のCEOの目に止まったことから、一挙に一気に人気Vブロガーになりました。李子柒はインタビューの中で、「私は将来の私の想像上の人生について撮影しています」と語っています。エレガントで伝統的な漢服を着、昔ながらの風景の中で、自然な食材、伝統的な調理手順を見せることで、彼女はショートビデオの新しい分野を切り開きました。 都会で忙しい毎日を送る人は、李子柒の動画でリラックスし、いつしか心の中にある「桃源郷」へ誘われていきます。
※中国は日本以上の学歴社会だが、一方でエリートならぬ庶民には、さまざまな生き方が残されている。中学中退といえば過酷な人生が待ち受けているように考えてしまうが、中国では就ける職業も多いようだ。実際、工場の職人などには親子代々アルバイターという人もいる。
農村部になるとさらに生きやすいようで、自給自足を基本に暮らし、定期的に立つ市で、路上で余剰物を売る。貧しいながらも、テレビや携帯電話もある。よそ者が素寒貧でやって来たとしても、農村部なら誰かがご飯にさそってくれるので、餓死することだけはないと、現地に長く暮らした人が言っていた。李子柒の動画の背景には、そんな中国人の原点があるのだろう。

