子どものころ,悪の組織の秘密基地がなぜバレないか不思議だった.大工さんの仕事を見る機会が多かったので,作った人からバレるだろうと思ったのだ.が、この疑問は時代劇ですぐ明らかになった.お城に連れて行かれたお父っつあんが帰ってこない,という娘の訴えで,黄門様だの何だのが乗り込むと果たして吊り天井を作らされてから、口封じされていた.そう,秘密は口封じだったのだ.
だが、サンダーバードを見て,この秘密基地がなぜバレないのだろうと心底不思議だった.何しろ正義の味方だから口封じはできないのだ.子ども時代に何度も考えたはずだが,さすがに答えは出せなかった.
そのうち思春期になると,そんなことは考えなくなった.せいぜい「どうせフィクションだろ」というような,ごく面白みのない答えで思考停止し,それより女の子のほうに興味が移っていった.ちなみにこの時期の面白みのない思考のまま大人,どころか中年,老年になった人は珍しくない.女の子のことで頭がいっぱいというところもそのままで.
さて,その後の人生でも,時折サンダーバード秘密基地の謎を考えることがあった.自身の年齢や環境によって,答えは幾つか出た。例えば,
その1:完全に秘密というより,分かってる人には分かってた
wikipediaによれば,秘密基地トレーシーアイランドは,多くの賛同者の協力でできたとあるので,これが原作者の意図に近いかもしれない.あまりおもしろい答えではないが.
その2:建設時のスタッフはそのまま島に残っている
番組には出てこないが,実は基地には一家の他にも建設に携わった人が残っていて,メンテナンスなどの作業にあたっている.トレーシー隊長が相当な富豪ならそれも可能だ.メンバーが実は家庭を持っていたとしてもなんとかなる.
その3:物語の期間が案外短い
徐々にバレてはいたが,ネットの無い時代の絶海の孤島だから,どうにもならなくなるまでにはそれなりに時間がかかる.全ての物語はそれまの期間の出来事だという訳である.メンバーは独身のようだし,バレなくても,いつまでもあのままではいられないだろう.
その4:見つかるたびに逃げて新しい基地を作っていた
トレーシー隊長が相当な富豪なら,それも可能だ.それともwikiにあるように,世界中で絶えず大型工事をやってるような会社が協力者で,正規の事業に紛れ込ませて作っていたのかも.会社ぐるみだと,大それた秘密もなかなか発覚しないのは,よく知られたことだ.
その5:大工の口が固い
プロフェッショナルなら,墓場まで持っていく顧客の秘密がいくつもあるのが普通だ.さしずめ大工さんなら,某氏邸の一部にとんでもないワンダーランドを作った,というような経験があるはずだが,絶対に口外しないだろう.しっかりした棟梁が,若い者まできっちり言い聞かせる.そのへんは洋の東西を問わないはずである.これがハウスメーカーかなんかだと,即日写真入りでSNSでさらされてしまうだろうが.
その6:実話である
基地は実際にあり,今でも救助活動が続けられている.なぜバレないかということこそ最大の秘密なのだから,その答えは知る由もない.もし話を聞いても,TVだろうと思われてしまうというのは,ひとつのヒントかもしれない.近年は例え目撃写真を撮られても,CGと思われるのがオチだから,むしろ昔より大胆に活動しているかもしれない.
次回「G線上のアリア-2」(8/27)公開予定
乞う、ご期待!
[その5:大工の口が固い]でしょう。職人は寡黙ですから。今もプロ職人にはそう願いたいですね。ペラペラ口の軽い職人は信用できません。そんな職人は、むしろ営業マンになった方がいいですね。それに基地内のスタッフはホルモン注射かなにかでいつまでも若さを保てるのではないでしょうか。どんな薬かって?それも口の堅い化学者ですから。