昔から高齢者の食事にモッツアレラ・チーズがいいのではないかと思っていた。シュレッドやブロックではなく、水に入ったもののことだ。塩分、カロリーは低めで高タンパク、低脂肪、クセがない。ピザやラザニアに使うのが一般的だが、刻んでサラダに混ぜたり、塩コショウや簡単なソースでそのまま切って食べることも多い。豆腐みたいなものだから、わさび醤油にも合う。
以前はスーパーではなかなか見つからず、あっても高かった。100g300円を切ったら、頑張ってるなあという感じで買うことにしていた。乳製品は消費者のニーズが反映されにくいが、それでも酪農王国北海道なら、もう一押しがんばって日本の食に新しい潮流を作ってもいいんじゃないかとも思っていた。
ところが最近、モッツアレラ・チーズを作るメーカーが増えてきた。軒並み価格があがった乳製品の中で、しかも頑張って価格を維持している。乳製品は酪農家と農協、メーカーの関係が密接で生産が北海道に偏っている。しかも基本的な食品過ぎてブームになることもない割に品不足や値上げだけが責め立てられる難しい分野だ。大胆な動きがしにくい中で、久しぶりに目立つ新ジャンルが登場した感がある。
酪農業界の努力に期待しつつも、簡単に自作できそうな気もして製法を調べていた。正式にはクエン酸やレンネットが必要だが、酢だけでもいけるというので試してみた。結果、うまくいったと思う。ポイントは低温殺菌牛乳を使うことで、普通の牛乳ではモロモロとしたカッテージチーズしかできない。凝固剤の種類にかかわらず、高温で殺菌された一般の牛乳は、成分が変質しているようだ。
手順は、低温殺菌牛乳を64度(※1)に温めて酢(※2)を加えてまぜてゆくと、ゆるい搗きたて餅のような状態になるので、ザルなどにすくいとって90度のお湯の中で揉みながら滑らかな球状にまとめる(※3)。自分の場合は少しきつく絞りすぎたようで、ハードタイプのナチュラルチーズのできたてみたいになったが、中は十分なめらかで熱したらちゃんと溶けて糸を引いた。原料の牛乳の費用と市販品を比べたコスパでは、自作が若干優位。絞りすぎなければ倍くらいのコスパになったかもしれない。残った大量のホエーは、ナンの生地に使ったので十分お得感があった。また、良質な低温殺菌牛乳を使うので、味は合格だった。
今後の課題は手際の良さ(※4)。今回はもたついて若干量の無駄が出たようなので、スムーズにやればもう少し歩留まりがよくなりそうだ。また、全脂粉乳はフリーズドライなので成分が熱で変質していないそうだから、これで乳固形分を足してドーピングできないか考えている。
※1 温度は50度に達したところで火を止めて酢を入れれば良いとわかった。
※2 酢の量は30ccだが、ホエーが白いようなら酢を足すか、温度を上げる。仕上がりの滑らかさでは温度はそのままで酢を足すほうが良いように思う。また、酢を入れてからはあわてず時間をかけてかき混ぜてやると、ホエーがかなりはっきり透明になる。
※3 仕上がりがつるんと丸いのは格好いいが、多少ボソボソして見えても表面だけで中はなめらかだ。ちなみにこのやり方では、1Lの牛乳が仕上がりが200gになった。圧倒的なコスパになった。
※4 手際と言ったが、実際はかなり大雑把にのんびりやっても大丈夫だと思う。
今度はチーズ職人に変身ですか?。研究熱心には感心します。自分はチーズが苦手な方ですから余り好んで食しません。滅多に食べませんがトーストに使う程度。後はパスタに粉チーズをかける程度。たまには小さなブロックチーズを食べる事も有りますが、その反面、チーズの作り方は知らずに居ました。北海道では乳牛も多く乳製品も沢山ありますが、まさか自家製チーズを作るとは驚きですね。しかし良質の原材料が身近で手に入る環境をもっと理解して自家製乳製品にも挑戦すべきでしょうね。
職人芸は全く必要なかったですね。味噌汁の味噌を溶くのに職人芸は必要ない、というレベルです。欧米では低温殺菌牛乳が普及しているらしいので、家庭料理のひとつのようです。こちらではどこのスーパーにもあるというほどではないですが、そこは北海道なので、本州より少々安くなってます。また、乳製品全般が値上がりしたせいで、相対的に低温殺菌牛乳の割高感がさがりました。既製品のモッツアレラチーズについては、高齢世帯や若い独身世帯の購入が増えているようなので、小さいトレンドが生まれるかもしれません。