メリー・クリスマス!
歴史上、多くの軍事作戦がクリスマスまでの戦争終結を目指して実施され、思惑通りにはならなかった。ウクライナにせよイスラエルにせよ、クリスマスの声を聞くと、また今年も終わらなかったと思ってしまう。
ネット時代は、今起こっている戦争の、その日の兵士や兵器の損失数、前線の移動距離などが毎日公開される。それを見ていると、片方が「何キロメートル前進した」と発表した同じ状況を、他方は「何キロ誘い込んで、これだけの損害を与えた」と発表しているように見えてくる。孫子が言う通り戦争とは騙し合いなので、発表されたものがそのまま事実とはいかない。が、両方ともウソをついているわけではなく、作戦通りに成果をあげたと考えているのだとすれば、これは長引くわけだと思う。
メディアは、戦況が一進一退だという。まるでプラマイゼロのような言い方だが、実際には毎日千人単位の戦死者が出ていて、国はその分確実にダメージを被っている。そんな判断のつけづらい戦況データを見て、優位か劣勢か見極められるのは軍人だけだ。講和を決定するのは国民と指導者だが、今のままでどうなるか見通しを述べるのは軍人の仕事だ。だが、戦況が混迷した時に限って、生粋の軍人を要職から外して政治寄りの人物をすえてしまう。これもまた戦争の歴史で、何度も繰り返されてきたことだ。
「勝敗にかかわらず、戦争でペイした国はない」と言ったのは、確か軍事研究家のリデル・ハートだったと思う。一進一退と言われる境界線の前後の何キロにも及ぶ地帯は、建物も立木も焼き払われ、壊れた車両や兵器から流れ出した毒物と不発弾、染み込んだ血液と放置された腐敗物で、誰が手に入れたとしても使い道がない。
昔から領土の奪い合いは絶えません。しかし太平洋戦争では日本の領土は大被害を受けましたが奪われませんでした。それより不思議だったのは当時のアメリカが終戦後に手を差し伸べ支援した事でした。子供の頃アメリカが大っ嫌いでしたが、その反対にアメリカの考え方に感心もしたものです。終戦当時には砂糖の配給など生活物資での支援など、今で言う災害時の救援物資の提供の様な事実もありましたから、原爆投下で我が国は大被害を受けたの敵国でありながら彼らの考えに感心した国民も多いのではないでしょうか。戦争も終わって見れば、どちらも傷つき大損害を被って、気づけば無駄な犠牲ばかりですね。願わくば、じゃんけんで勝ち負けを決めるだけならいいのですが。ただ、終戦後はアメリカ文化への理解が大きな成果になった事は間違いなさそうですね。
幕末にアメリカだけが莫大な費用をかけて政府専用船(黒船)を派遣し、開国を求めました。それ以前にもオランダ等は国王の親書を送って来きてましたが、より礼儀にかなったアメリカの提案を受け入れたわけです。オランダは江戸時代も関係のあった国ですが、偽造でないとは言いきれない親書に基づいて外交をするわけにもいきません。アメリカは、エアフォースワン(大統領専用機)でもわかるように、軍艦はまぎれもない政府所有物なので、誠意が高いわけです。それもあって、アメリカに合わせて1ドル1円のレートで貿易が始まり、以後150年以上の友好的な関係の中で4年間だけ喧嘩してしまったとも言えます。その後は両国ともに非常に反省して友好関係の回復に配慮し合ってきた、とも言えます。少なくとも政治レベルではそうですね。