歯の弱い家系なので覚悟はしてきたが、近年とみに歯が弱くなってきた。そのくせバリバリザクザクした食べ物が好きなので、寂しい思いをしている。特に中華料理の、強い火力を使った青菜の炒めものは、もう二度と食べられないだろう。堅焼きの醤油せんべいも好きだ。しかもなるべく硬いのが好きだが、かじりついて歯で割るなんていうのは過去の夢で、手で割って食べなければならなくなった。その際ゲンコツなどで割ると、小さな破片が飛び散ってしまうが、指一本で「秘孔」を突いてやれば、揃った大きさの破片になって粉が飛び散らないことに気づいた。私はこれを「破煎拳」と名付け、長く世に伝えていきたいと思う。
破煎拳要諦第一
・其れ煎餅には虚実の違いあり。実は薄く均一にして固く、虚は膨らみて中空なり。
・破煎にあたってはよく実を見極め、これを打つべし。虚を打つべからず。
・中央に有りて、実にして平らかなるは第一の秘孔にして、北冥と称す。
・実にして中央に近く、窪みたるを南冥と称し、第二の秘孔なり。
・中央に在りと言えども膨らみたるは、虚孔と称しその中虚し。これを打つべからず。
・破煎の道は遠しといえど、朝夕に各千打を行えば、必ずや道は開けん。
(日本語訳)
煎餅には固くて薄く、中身の詰まった「実」と呼ばれる部分と、膨らんで中が中空の「虚」と呼ばれる部分があるので、よく見極めた上で、「実」の部分を指先で打つのである。「実」のうち、中央にあるものは特に「北冥」と呼ばれ最も割りやすく、中央から離れていても「実」の部分は「南冥」と呼ばれ、二番目に割りやすい。中央にあっても「虚」である部分は、(片面だけ割れて、全体が割れないことがあるので)これを打つべきではない。煎餅をきれいに食べやすく割るのはなかなか困難なものだが、日々の修練を重ねれば、必ず熟練できるだろう。
ジップロックに入れて割ったらいかがですか?(失礼!そう言う問題では無さそうですね?)
ジップロックに頼る、それは心の弱さに繋がります。真の煎餅割り師への道ではないでしょう。(年取ってからあまりくだらない冗談をいうと、あいつもいよいよかと思われそうで、ちょっと心配です)